はな)” の例文
はなが、東京とうきょう奉公ほうこうにくるときに、ねえさんはなにをいもうとってやろうかとかんがえました。二人ふたりとおはなれてしまわなければなりません。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
寶鼎はうてい金虎きんこそんし、芝田しでん白鴉はくあやしなふ。一瓢いつぺう造化ざうくわざうし、三尺さんじやく妖邪えうじやり、逡巡しゆんじゆんさけつくることをかいし、また頃刻けいこくはなひらかしむ。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのはなは、のめずりたおれた老人ろうじん死体したいを、わらつておろしているというかたちで、いささかひとをぞつとさせるような妖気ようきただよわしている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
みちざねはあかい、うめのはなを みて、あの うつくしい うめのはなの いろを わたしの かおに つけたい と うたったのです。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
でもこれがもしほんとうだったとすれば、はなのきむら人々ひとびとがみなこころ人々ひとびとだったので、地蔵じぞうさんが盗人ぬすびとからすくってくれたのです。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
相手の陸奥むつはなもそんなに細かい力士ではないが出羽に向つて仕切ると四階見物より『小さいのーイ、しつかりしろ』と怒鳴られる。
「こいづば鹿しかでやべか。それ、鹿しか」と嘉十かじふはひとりごとのやうにつて、それをうめばちさうのしろはなしたきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
いつはりではけれどくすとはなにを、デハわたしからまをしませう深山みやまがくれのはなのおこゝろひさして莞爾につことすれば、アレわらふてははぬぞよ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その喜兵衛は本妻を娶らずに二人のわかい妾を置いていたが、その妾の一人のおはなと云うのが妊娠した。喜兵衛は五十を過ぎていた。
四谷怪談 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
一二月いちにがつころのような小枝こえだに、黄色きいろはなけたり、また蝋梅ろうばいのようにもっとはやゆきなかかをりたかくほこるものもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
譬えば新体詩なんぞになんじと書いてナと読ませてナのおもかげとかナの姿とか読ませる。文字を見ずにただ聞くとはなが幽霊になったようだ。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いとはず出歩行であるくのみかむすめくまにも衣類いるゐの流行物櫛笄くしかうがひ贅澤ぜいたくづくめに着餝きかざらせ上野うへの淺草あさくさ隅田すみだはな兩國川りやうこくがは夕涼ゆふすゞみ或は芝居しばゐかはと上なきおごり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
要するに、はなと云ひと云ひ、それが美であらうと力であらうと、単にその時々の心構へや努力だけではどうにもならぬものであります。
すすむこと一里半にしてきふ暖気だんきかんず、俯視ふしすれば磧礫間温泉おんせんありて数ヶ所にづ、衆皆くわいぶ、此処はあざはな或は清水沢しみづさはと称し
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
下女がちやんと控えてゐる。已を得ず同県同郡同村同姓はな二十三年と出鱈目でたらめを書いて渡した。さうして頻りに団扇うちわを使つてゐた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
元園町に接近した麹町三丁目に、杵屋きねや路久ろくという長唄の師匠が住んでいた。その娘のおはなさんと云うのが評判の美人であった。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
づこんなりふれた問答もんだふから、だん/\談話はなしはながさいて東京博覽會とうきようはくらんくわいうはさ眞鶴近海まなづるきんかい魚漁談ぎよれふだんとう退屈たいくつまぬかれ、やつとうらたつした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
米八が『春色しゅんしょくめぐみはな』のうちで「そんな色気のないものをたべて」とけなした「附焼団子つけやきだんご」は味覚の効果をほとんど味覚だけに限っている。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
天女てんによ御空みそらふがごと美音びおんは、こゝろなき壇上だんじやうはなさへさへゆるぐばかりで、滿塲まんじやうはあつとつたまゝみづつたやうしづまりかへつた。
かれここにその姉は、いとみにくきに因りて、見かしこみて、返し送りたまひて、ただそのおとはな佐久夜さくや賣毘を留めて、一宿ひとよみとあたはしつ。
紫陽花あぢさゐはなのだん/\調とゝのつてくありさまが、よくんであります。そのうへに、いかにも紫陽花あぢさゐてきした氣分きぶんてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
やはらかさに滿たされた空氣くうきさらにぶくするやうに、はんはなはひら/\とまずうごきながらすゝのやうな花粉くわふんらしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つきすると、木々きぎこずえ青葉あおばつつまれ、えだえだかさなりって、小鳥ことりもりこだまこして、うえはならすくらいに、うたしました。
つまあをざめた顔色かほいろやうやはなのためにやはらぎ出した。しかし、やがて、秋風あきかぜが立ち出した。はな々はを落す前に、そのはならすであらう。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
それに、まぐろの脂肪がすこぶる濃厚のうこうでありながら、少しも後口あとくちに残らぬという特徴があって、まさに東京名物として錦上きんじょうはなを添えている。
握り寿司の名人 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
今年ことしみたいに、紅白こうはくはながたんといたとしい。一面いちめんめるやうないろだ。どこへつても垣根かきねうへしゆ御血潮おんちしほ煌々ぴかぴかしてゐる。
東京の桜井書店で発行になった吉井勇よしいいさむ氏の歌集『旅塵』に、佐渡の外海府での歌の中に「寂しやと海のうえより見て過ぎぬ断崖だんがいに咲く萱草かんぞうはな
植物一日一題 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
あなたの生涯しょうがい随分ずいぶんつらい一しょうではありましたが、それでもわたくしのにくらぶれば、まだはるかにはなもあって、どれだけ幸福しあわせだったかれませぬ。
つきゆきはなおろいぬんだとては一句いつくつくねこさかなぬすんだとては一杯いつぱいなにかにつけて途方とはうもなくうれしがる事おかめが甘酒あまざけふとおなじ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
どうも余程よっぽど惚れてますよ、私が浮世の義理に一寸ちょっと逢って来ますから、あのなに、はなさん、若旦那をお連れ申しておくれ
ほかに「はすはな」のレーマン、「月の夜」のシュルスヌス、「春」のシューマンなどがとにもかくにも良いものであろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
侍童 御方おんかたはかまかうとてはなってわせられました。とほくへはなれてゐいとおほせられましたゆゑ、わたくしはさやういたしました。
祖父おぢいさんの書院しよゐんまへには、しろおほきなはな牡丹ぼたんがあり、ふるまつもありました。つきのいゝばんなぞにはまつかげ部屋へや障子しやうじうつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
……その風かをる橋のうへ、ゆきつ、もどりつ、人波ひとなみのなかに交つて見てゐると、撫子なでしこの花、薔薇ばらはな欄干らんかんに溢れ、人道じんだうのそとまで、瀧と溢れ出る。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
もう姫君ひめぎみんだのだ、んでしまへば、もうこのはなも、とりも、うたも、ふたヽびきくこともみることもできないのだ。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
いました。するとかきはずんずんのびて、大きな木になって、えだが出て、しげって、やがてはなきました。
猿かに合戦 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこへ、お手伝いのおはなさんが山のように握飯をもって入ってきた。三人はウワーといって、まわりから手を出した。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
うめはなはなののどかな村むらを、粟毛くりげ額白ぬかじろの馬をのりまわした糟谷は、当時とうじわかい男女の注視ちゅうし焦点しょうてんであった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
思へば風前ふうぜんともしびに似たる平家の運命かな。一門上下しやうかはなひ、月にきやうじ、明日あすにもめなんず榮華の夢に、萬代よろづよかけて行末祝ふ、武運の程ぞ淺ましや。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
お神が窓からほうりこんでくれたお菓子を妹たちにけ、自分ははなづけの気仙沼の烏賊いかをさいて、父と茶漬を食べている銀子に、母が訊くのであった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なるほど若年のころははなやかなるはいうまでもないが、頭の白きも、ひたいの波も、華化かかすることはできぬであろうか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ものたましひがあるとの想像さうざうむかしからあるので、だい山岳さんがく河海かかいより、せうは一ぽんくさ、一はなにもみなたましひありと想像さう/″\した。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
北野きたのはづれると、麥畑むぎばたけあをなかに、はな黄色きいろいのと、蓮華草れんげさうはなあかいのとが、野面のづら三色みいろけにしてうつくしさははれなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
こんないい景色けしきァ、毎朝まいあさられるじゃァねえッて。——ごらんなせえやし。おまえさんの姿すがたえたら、つぼんでいたはなが、あのとおり一ぺんきやしたぜ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それが成功すれば、旅楽に錦上きんじょうはなを添えるべきものとして彼はその目的を重大視してはいたが、また失敗しても旅楽を傷つけはしないだろうと考えていた。
ひさびさのあいさつをかわし、よもやまのはなしはなをさかせているうちに、壱岐いきは、一さつの原書げんしょをとりだして
美人玉乗りのおはなが、酒のために赤くほてった顔に、微笑を浮べて、さも自信ありげに口を入れた。村中の評判になった、このお花の名前は、私も覚えていた。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
れるはなを見、飛ぶ蝶に眠気ねむけを誘われ、のどかな町の音響や、城普請しろぶしんのみの音など聞いていると、将士は無為むいに飽いて、ふとそんな錯覚すら抱くのだった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはつかあたまのところがかんかたちをして、そのなかとりけだものや、あるひははなかたちがついてゐるものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)