ひょう)” の例文
夜に入るまで、飲み興じ、あくる早暁には、すでにげんの三兄弟は、もとの石碣村せっかそんへ、ひょうとして立ち帰るべく、朝飯をいそいでいた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
無欲で物にこだわらないところも、ひょうひょうと楽天的なところも、ただ三男の又三郎だけは口が達者で、四人分を独りでひきうけたように饒舌しゃべ
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
兎にも角にもおぼえある武士ならん、いかに射るぞと見てあれば、かれは鏑矢かぶらやを取ってつがえ、よっ引いてひょうと放つ。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
船も船頭も遠くから近くへひょうとして来たが、また近くから遠くへ飄として去った。ただこれ一瞬の事で前後はなかった。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
が、相手は隻腕、何ほどのことやある?……と、タ、タッ、ひょうッ! 踏みきった森徹馬、敵のふところ深くつけ入った横ぎが、もろにきまった——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まこと旗本ならばあのようなれ看板せずともよい筈、喧嘩口論白刄くぐりが何のかのと、無頼がましゅうひょうげた事書いて張ったは、隠密の素姓かくす手段てだてであったろうがッ。
ひょうとしてまた流れて、翼をたわめて、あ、大きく張った。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
つつしむにはあまりひょうきんである。聴衆は迷うた。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「おのれも、賊の組か」前に立った人影の真っ向へこぶしをかためて一撃をふり下ろすと、相手は、ひょうとして、身をかわしながら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蒋侯の木像は弓矢をたずさえていたが、その弓を絞ってひょうと射ると、男は矢にあたって死んだ。往来の者も、廟を守る者も、皆それを目撃したという。
定番、柴山又左衛門の弟で大四郎と名を告げ、ひょうひょうとたち去るうしろ姿を感嘆したように見送っていた八郎兵衛は、やがて振返って、「見たか梶」と呼びかけた。
ひやめし物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
やがて、指名をうけると、ひょうとして、式場の間の方へすすんでゆく姿など、いかにも免状式の日の、小学生そのものだった。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見たこともない白髪の老人などが、ひょうとして、横ぎってゆく。——御先祖様かも知れない。と清麿の、意識ともつかない不思議な意識がふと思う。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょうとしてここに旅へ吹かれ出た史進の姿は、いかにも宋朝時代の若人わこうど好みないきづくりだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道士一同はひょうとして去り、翌日、宋江は軍師呉用や朱武たちとはかって、忠義堂の扁額へんがくのほかに、こんどの一奇瑞きずいを記念して「断金亭だんきんてい」という大きな額をかかげることにした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、また元の孤児に返って、師のあとを、ひょうとうらぶれ歩いているにはちがいなかろう。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またひょうとして去るといった風なのを——近ごろ、北条高時の生母覚海かくかい夫人が、やっと捜し求めて鎌倉にしょうじ、それでしばらくは、ここにとどまっているものの、都からも、勅諚ちょくじょう再々で
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とばかり、冗談に言いまぎらわし、たそがれの山門からひょうとして飛び出て行った。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸葛きんは、呉の臣に返って、うやうやしく賓客を通し、ひょうとして、立ち去った。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
都は知らず東国では源氏の名流、武門の雄と見なされている足利氏の曹司ぞうしである。ゆらい遠国者の上洛ほど派手をかざって来るものといわれているのに、ひょうとして、一人で門を叩くなどはおかしい。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春海さんも、ひょうと消え、健吉さんは、土地の会津八一氏を、訪問。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひょうとして、ひとりの書生が、奥から馳けてきて、門をひらいた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いうかと思うとひょうとして名も告げず、立ち去ってしまった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とのみ、ひょうとして、すぐ立ち去ってしまったという。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兼好は、道を北の方へ、ひょうとして、立ち去った。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)