頭部あたま)” の例文
そうして自然ひとりで頭部あたまに手を遣りながら、「気味が悪いなあ! お雪の奴、来て見ていたんだろうか。……彼奴屹度来て見たに違い無い。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
林「出てくもかねえもらねえ、えやならえやで訳は分ってる、突然えきなり頭部あたまにやして、本当に呆れてしまう、何だってったよ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
亭主は鳩尾みぞおちのところを突きとおされる、女房は頭部あたまに三箇所、肩に一箇所、左の乳の下をえぐられて、たおれていたその手に、男の片袖をつかんでいたのだ
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すべて城方の参謀、兵士らは、空腹と疲労に生色なく、軍衣は破れ、あるいは頭部あたまに、あるいは腕に繃帯し、血が滲んでいるなど、悪戦苦闘の跡著し。
彼は肩の上に喰い込んでいる菊の鉢を、そのまま、眠っている少女の頭部あたまめがけて投げ付けたい衝動を、ジット我慢しながらモウ一度、寝台の中を白眼にらみ付けた。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それに気絶するほど頭部あたまぶたれたのだから、脳病でも出なければ可いつて、お医者様もさう言つておいでださうだけれど、今のところではそんな塩梅あんばいも無いさうだよ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
わたくしすこまくらから頭部あたまもたげて、覚束おぼつかないつきをして、あちこち見𢌞みまわしたのでございます。
「夫が、このとおり、空襲で頭部あたまに負傷いたしまして、なかなかくならないんですの。早く名医めいいの手にかけないと、悪くなるという話ですから、これからロンドンへ急行するんです」
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
数多の打傷ありせななどは乱暴に殴打せし者と見え一面に膨揚はれあがり其間に切傷ありて傷口開き中より血に染みし肉の見ゆるさえあるに頭部あたまには一ヶ所太き錐にて突きたるかと思わるゝ深さ二寸余の穴あり其上つちの類にて強く殴打したりと見え頭は
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
頭部あたまほうにもモー一ぽんえますが、それは通例つうれいまえのよりもよほどほそいようで……。
重次郎さんの扮装なりてえのはまるで角兵衛獅子でございますね、白の着物に赤い袴で萌黄色もえぎいろのきれの附いている物を頭部あたまかぶって、あれで獅子が附いてれば角兵衛獅子だが、あれは蛙だから重次郎蛙です
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)