面持おもゝち)” の例文
『さうです。きみられた學校がくかうです。三田みたですか、早稻田わせだですか。』と高等商業かうとうしやうげふ紳士しんし此二者このにしやいでじといふ面持おもゝちふた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その面持おもゝちすこしも常に殊ならず。われは心の底に、言ふべからざるはぢいきどほりとを覺えて、口に一語をも出すこと能はざりき。
いゝ氣味だと云はぬばかりの面持おもゝちにて、笑ひ罵るのみ、誰一人醫者を呼びに行つてやる樣子もなかりし。
荷風戦後日歴 第一 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
なくば此處こゝ自害じがいすると半狂亂はんきゃうらん面持おもゝち是非ぜひなく、自得じとくはふにより、眠劑ねむりぐすりさづけましたところ、あんごとくに效力きゝめありて、せるにひとしきその容態ようだい手前てまへ其間そのあひだ書状しょじゃうして、藥力やくりきつくるは今宵こよひ
おくさまのもとの用心ようじんをとわたし、れもれもよとおつしやつて、おなじう寐間ねまへは入給いりたまへど、何故なにゆゑとなうやすからぬおもひのありて、はねども面持おもゝちたゞならぬを、且那だんなさま半睡はんすい御覽ごらんじて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
老母は声をふるはしてわめき立てた。老父は黙つて火鉢の傍で聞いてゐた。子供達はいつになく大変な事が持ち上つたといふ面持おもゝちで暗い三畳の隅つこに小さくうづくまつて老母の様子を見まもつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)