かか)” の例文
そんなら銭のかからん研究法をしなくてはならんが、其には自分を犠牲にして解剖壇上に乗せて、解剖学を研究するより外仕方がない。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
私は今挙げたような造営物の維持を助けている——それだけでも随分かかりますよ。暮しの立たない者はそこへ行くが可いのさ。
それに、もう一つ法水さん、永い間かかって自然科学が征服したものと云うのが、カバラ教や印度インド瑜伽ユカ派の魔術だけに過ぎないと云うこともね……
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ところが、その原平内も武運つたなく、海上で風浪にい、そのため日数もかかって、彼が毛利家へ着いたときは、中国の大機すでに決した後だったのである。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「え。かなりかかつてゐるんですが、しかし大したことはありませんよ。さう玉がよくござんせんからね。」
蒼白き巣窟 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
さうしないと不安心だからねえ。いくらでも可いんです。屹度返します、僕は君、今日迄三晩共やしろに泊つて来たんです。木賃宿に泊つてもいくらかかかるからねえ。
葉書 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
なるたけ時日のかかりそうな、むずかしい扇を、でたらめに考え出した。扇が、例の扇箱に納められて、吉良から下げられない前に、美濃守は、役目を解かれるに相違なかった。
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ただもう軽いッかりした虚栄心に駆られて、画家になりたいというような気を起こす人も大分あるようですが、一人前になるまでには長い年月もいることだし、それには相当の資力もかかるし
水を飲みに行つたと噂をされた位、美事な彫物であつたが、之も歩兵が射出うちだした鉄砲の為に、焼かれてしまつた、其れから中堂、此の中堂は金がかかつて居た、欄干は総朱塗で、橋があつて之を天馬ばし
下谷練塀小路 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
鉄道はある、が地方のだし、大分時間がかかるらしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「家の生活くらしは、いくらかかるんですよ。」
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ゆっくりしようよ支倉君、あの日本で一番不思議な一族に殺人事件が起ったのだとしたら、どうせ一、二時間は、予備智識にかかるものと思わなけりゃならんよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
信長の着用する蜀江しょっこうの小袖の袖口につかう金縒モールを捜すため、京都中を奔走ほんそうしてようやく適当な品を見出したというほど、金力と人力がそれまでにはかかっていたものである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
加之のみならず年老としとつた両親と、若い妻と、妹と、生れた許りの女児をんなのこと、それに渠を合せて六人の家族は、いかに生活費のかからぬ片田舎とは言へ、又、倹約家しまりやの母がいかにしまつてみても
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『中学も卒業せずに南米に行つたつて奈何なるもんか。それに旅費だつて大分かかる。』
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「この一巻を始めから唱えていたとすると、此処迄に何分位かかりますね?」
後光殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
たつた一本の銚子に一時間もかかりながら、東京へ行つてからの事——言葉を可成なるべく早く改めねばならぬとか、二人がまだ見た事のない電車への乗方とか、掏摸すりに気を付けねばならぬとか
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ところで、至誠かみに通ずなんてえ言葉は、ありゃ嘘だ。俺は、無法神に通ずといいたいね。ジメネスが、一年もかかってやっとゆけた道を、俺は、ズブズブ沼土を踏みながら十日で往ってしまったよ。
人外魔境:05 水棲人 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
『何もその銭金のかかこつで無えのだ。わし其麽そんなもので無え。自分で宿料を払つてゐて、一週間なり十日なり、無料ただで近所の人達に聞かして上げるのだツさ、今のその、有難いお話な。』
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
『それどころぢやない、花道ばかりで何年とかかかるさうだ。』
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
『それどころじゃない、花道ばかりで何年とかかかるそうだ』
火星の芝居 (新字新仮名) / 石川啄木(著)