あや)” の例文
けれども女は静かに首をっ込めて更紗さらさ手帛はんけちひたひの所を丁寧に拭き始めた。三四郎は兎も角もあやまる方が安全だと考へた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「さうですか。わかりました。ござんす、それでは十日には屹度越すことにしますから」とあやまるやうに云つた。
子をつれて (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
アッハッハッハッ違うかな。いや違ったらご勘弁、こいつ器用にあやまってしまう。とはいえそうでも取らなかったら、他にとりようはないじゃあないか。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
めったに叱ったこともありません、たまさか叱りましてもすぐに母の方からあやまるように私の気嫌を取りました。
女難 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
顔は見えないが高麗こま村の次郎でしょう。次郎は太陽にあやまッているように、膝をかかえて泣いていました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれは泣いてあやまっていた。汚ない顔じゅうを涙で洗うにまかせた二目と見られない顔であった。
幼年時代 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
如何いかゞ致そうかと照も心配致して、又々旅立たびだちを致そうか、たゞしはあやまって信州の親族の処へ参ろうかと思って居った所で有るが、一人の娘を谷間へ落して殺したのも是も皆ばち
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さて道々長兵衞八五郎は後藤に向ひ彼の久兵衞と云ふ奴は先生を見ると大いにきもつぶせし樣子にて無闇むやみに手を合せて御慈悲々々おじひ/\あやまりたる可笑をかしさよ尤も先生の勢がすさまじいゆゑ誰も先生の顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
怒る筈の主人が却って仲裁役になったんですから、親方も勘弁するのほかはありません。親方は西山を老主人夫婦、若主人夫婦、娘ふたりの前へ引摺って行って、さんざんあやまらせたんです。
怪獣 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と別にあやまらうともしなかつた。
「急に言ったのが悪けりゃあやまります。そうだったね、一年前位に言ったらお前達も幸福しあわせだったのに」
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「豆も磨いた、水もんだ。——おい、君粗忽そこつで人の足を踏んだらどっちがあやまるものだろう」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
乙吉とお三輪が、金切り声をしぼってあやまるのを、お十夜は耳にも貸さないで
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上げアヽ何卒どうぞ御勘辨ごかんべん下されよおほせの通り持參金も離縁状も殘らず差上申べし何卒なにとぞ御助け下さる樣ひとへに願ひ奉つると涙を流してあやまるにぞ後藤は漸々やう/\勘辨して遣はさんと云ながら引起しよく/\顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
飯「源助、手前は孝助をうたぐって孝助を突いたからあやまれ」
「もし疑ぐるのが悪ければ、あやまります。そうしてします」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
『何せい、殿様をあやまらせたのは、彼奴あやつばかりだからのう』
濞かみ浪人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)