うた)” の例文
大衆はとかく感情をむき出しにうたいたがる傾きがある。その感情はもう飽き飽きして居る陳腐なものである。それは好ましくない。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
つけられていると聞いて「男の子やもいとけなけれど人中に口惜くちをしきこと数々あらん」とかの女は切なくうたったこともあった。
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
すると彼らは討ち死にする。不幸のようではあるけれど、その華々しい戦没の様が、詩となり歌となってうたわれる。ある者は神にさえまつられる。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
妻をうたい子を詠う歌は勿論もちろん、四季おりおりの気遣きづかいや職務とか人事、または囚人の身の上をしのぶ愛情の美しさなど、百三十二ほどのそれらの歌は
睡蓮 (新字新仮名) / 横光利一(著)
もし今いったように「今」と「ここ」に生きている喜びをうたう時、必ずその時、季節ある場合は、その「歴史」すらが必ずにじみださずにはいられないのである。
美学入門 (新字新仮名) / 中井正一(著)
「何ぞ曲をのぞんでやってください、唐曲とうきよくくし、平家もうたう」峰阿弥は、手を振って
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(舞台裏にて、低い吟詠ぎんえい調にて『合唱』をうたう。人数は少くとも三十人以上であること)
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
妻は病牀にし児はうえくとうたった梅田雲浜うめだうんぴんの貧乏は一通りのものではなかった。
志士と経済 (新字新仮名) / 服部之総(著)
無骨ぶこつ一偏の者がはからぬ時にやさしき歌をうたうとか、石部金吉いしべきんきちと思われた者に艶聞えんぶんがあるとか、いずれも人生の表裏であるまいか。しかしこれあるは決して矛盾むじゅんでない、あるこそ当然である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だから、レヴェズはそれを見て伸子が武具室にいると思い、それから噴泉の側で、あの男の理想の薔薇をうたったのだよ。ところで君は、『ソロモンの雅歌』の最終の章句を知っているかね。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
僧侶も乞食であれば、職人も乞食、食物以外の物を以て食物と交換する者はみな乞食であります。前に申した「万葉集」の歌に、乞食のうたというのが二つありますが、それは漁師りょうし狩人かりうどとの歌です。
などゝ、うたひながら創作の構想に耽つてゐた。
南風譜 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
俳句を駆って労働問題等をうたわしめようとする事は、新しきにつくことではなくって、俳句本来の性質を無視することになる。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「芙蓉モ及バズ美人ノヨソホヒ、水殿風来タッテ珠翠カンバシ」と王昌齢がうたったところの西宮せいきゅう睫妤はんにょを想わせる。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どの歌もどの歌もみんないつわりのない魂がこもっている。歌よみ根性がないから、読む者の心を打つのだ。心の底からうたいきっているから、こっちの心の底にもひびいて来るのだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
呑気者のんきもの、労働者、知識階級、貧乏人、物持ち、それらは問わない、如何なる種類の人でも、本当の心持をうたったものは結構。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「白雲もいゆきはばかり」とうたわれた峰のあたりに一所ひとところ白く寒々として眼に見えるのは谿たにに残った万年雪でもあろう。少し下がった左の肩に昼の月が浮かんでいる。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水鳥の群の中を分け、一筋白い水脈みおを曳き。……そこで白拍子はうたいました。『鳥をわけて朝妻船も過ぎぬれば同じ水脈にぞまた帰りぬる』こうして堅田かただへ着きました。壺に涙が溜まりました。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どのような場合にうたったものか、その点もそちは存じておるかな?」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
詩人李白がうたったっけ。——
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)