見紛みまが)” の例文
継はぎの足袋に草鞋ばかり、白々としたはぎばかり、袖に杜若かきつばたの影もささず、着流したみのの花の雪はこぼれないが、見紛みまがうものですか。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
戸塚名物の一たる現早大グラウンドは見紛みまがふ計りに改造せられた。選手は暇あればグラウンドに出て、星を戴くまで打棒バツトをビユー/\振つて居た。
ぷーんと、麝香松子においあぶらの香が立つりたての青い頭から、色の小白いくちもとすこし下がったところの愛嬌黒子あいきょうぼくろなど、尼かとも見紛みまがうばかりな美僧であった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
華奢きゃしゃな手足……それはまったく女の子にも見紛みまがうべき美少年であった。
逗子物語 (新字新仮名) / 橘外男(著)
昨日きのふあまへてふてもらひしくろぬりの駒下駄こまげた、よしやたゝみまが南部なんぶにもせよ、くらぶるものなきときうれしくて立出たちいでぬ、さても東叡山とうえいざんはるぐわつくも見紛みまがはな今日けふ明日あすばかりの十七日りければ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼の三人の士官こそは、見紛みまがうかたなく某大国の海軍士官であった。
東京要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
り、西方さいはうよりはうしかと見紛みまがふばかりのおほかみ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
と声ふるえて、後ろの巡査に聞こえやせんと、心を置きて振り返れる、まなこに映ずるその人は、……夜目にもいかで見紛みまがうべき。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
北並木通りノルド・アレイまでドライヴに来たのだが、お宅の前を通りかかったからと、お立ち寄りになったことがある。端麗というよりも、女優にも見紛みまがわしいほど婉麗えんれいな二十二、三の侍女が、お供についていた。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
なさけを含んだ、……浴衣は、しかし帯さえその時のをそのままで、見紛みまがう方なき、雲井桜の娘である。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白面はくめん黄毛くわうまう不良青年ふりやうせいねん見紛みまがふべくもないいたちで。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)