見真似みまね)” の例文
旧字:見眞似
般若の面の男 見よう見真似みまねの、からざる踊りで、はい、一向いっこうにこれ、れませぬものだでな、ちょっくらばかり面をつけて見ます了見りょうけんところ
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
次第にれて来て、しまいには夜中看護婦がねむっている間一代のうめき声を聴くと、寺田は見よう見真似みまねの針を一代の腕に打ってやるのだった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
そんなですから私も自然見真似みまねをして、小さな鉢に松や南天などの芽生めばえを植え、庭に出る事が多いのでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そこから自ずから彼は表具もやれば刀を採って、木彫篆刻てんこくの業もした。字は宋拓を見よう見真似みまねに書いた。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
そこはせつが一通り心得ていやすから、失礼ながら殿様には、拙のすところを見よう見真似みまねに遊ばしませ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
大部分は見よう見真似みまねで、それに、持って生れた器用さと自分の工夫が役立ったに過ぎない。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その時の気遣ひな戦慄せんりつが残り、幾日も幾日も神経をさいなんでゐたが、やがて忘れた頃には、私は誰かの姿態の見やう見真似みまねで、ズボンのポケットに両手を差し、すみつこに俯向うつむいて
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
その無花果の木かげに花莚はなむしろだけは前と同じように敷かせて、一人で寝そべりながら、そんな実の出来工合なんぞ見上げていたが、ときどき思い出したようにび起きて、見真似みまね
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
なにも、家伝かでん秘法ひはふふて、勿体もつたいけるでねえがね……祖父おんぢいだいからことを、やう見真似みまねるでがすよ。」
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕事の合間、与八は海蔵寺の東妙和尚について、和讃わさんだの、経文きょうもんの初歩だのというものを教わります。それと共に、東妙和尚の手ずさみをみよう見真似みまねで彫刻をはじめました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「まあ何んて可愛かわいい目んめをして!」なんぞと、幼い私はその牛に向って、いつもおとなの人が私に向って言ったり、したりするような事を、すっかり見よう見真似みまねで繰り返しながら
幼年時代 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
起臥おきふしの、徒然つれづれに、水引みずひきの結び方、熨斗のしの折り方、押絵など、中にも唯今の菊細工——人形のつくり方を、見真似みまねに覚えもし、教えもされましたのが、……かく持参のこの手遊品おもちゃで。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そんな俗踊をいつのまにか見よう見真似みまねで覚えてしまったのである。
花を持てる女 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)