“見比(みくら)” の例文
そこへ往(い)て、昏(くら)まぬ目(め)で、予(わし)が見(み)する或(ある)顏(かほ)とローザラインのとをお見比(みくら)べあったら、白鳥(はくてう)と思(おも)うてござったのが鴉(からす)のやうにも見(み)えうぞ。
笑ふ時目尻の皺の深くなる、口髯の下向いた、寒さうな、人の好さ相な顔をした安藤は、臆病らしい眼付をして其紙と健の顔を見比(みくら)べた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そうした一種の鬼気(すごみ)を含んだ船長の顔と、部屋の隅でバナナを切っている伊那少年の横顔を見比(みくら)べると、まるで北極と南洋ほど感じが違う。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると、このときそこで酒(さけ)を飲(の)んでいた三、四人(にん)の若者(わかもの)は、目(め)を円(まる)くして子供(こども)のかごと、子供(こども)の顔(かお)を見比(みくら)べていましたが
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「くどいよ、女の鑑定は俺の柄ぢやねえ。お前が引受けたんだから、お前がやるが宜い。鼻の下を長くして、マジマジと娘の顏を見比(みくら)べる圖なんざ、八五郎にうつてつけだよ」
余はまず天狗巌を眺(なが)めて、次に婆さんを眺めて、三度目には半々(はんはん)に両方を見比(みくら)べた。画家として余が頭のなかに存在する婆さんの顔は高砂(たかさご)の媼(ばば)と、蘆雪(ろせつ)のかいた山姥(やまうば)のみである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
竜之助は土方の面(かお)と岡田の面とを等分に見比(みくら)べながら
平次は小判の光と、驚き呆れる常右衞門の顏を見比(みくら)べ乍ら、泌々(しみ/″\)とかう言ふのでした。
チッチッチッチッと廻転している秒針とを無意識にジーッと見比(みくら)べていた……が……やがて如何(いか)にも淋(さび)しそうな……自分自身を嘲(あざけ)るような微苦笑を、度の強い近眼鏡の下に痙攣(けいれん)させた。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それが歌(うた)い終(お)わると、にぎやかな笑(わら)い声(ごえ)が起(お)こって楽(たの)しそうにみんなが話(はなし)をしています。じいさんは喜(よろこ)んで、笑(わら)い顔(がお)をして目(め)を細(ほそ)くして、三人(にん)の娘(むすめ)らの顔(かお)を見比(みくら)べているようでありました。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
其處に集まつた、七人の顏を見比(みくら)べ乍ら、平次は順序よく答を整理して行きます。
伊那少年の横顔からサッと血の気が失(う)せた。魘(おび)えたように眼を丸くして俺と船長の顔を見比(みくら)べた。ホットケーキを切りかけた白い指が、ワナワナと震えた。……船長も内心愕然(ぎょっ)としたらしい。
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
平次はその隣りの庭石と、石を起した跡の穴とを見比(みくら)べてをります。
見比(みくら)べながら、何やら合圖を