見掛みかけ)” の例文
なかには見掛みかけわるかたちのものもまじつた。へんなのが出來できるたびにきよこゑしてわらつた。小六ころく庖丁はうちやう濡布巾ぬれぶきんあてがつて、かたみゝところりながら
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その博士や土方にまじつて毎朝大学の構内を通る十歳とをばかりの子供がある。子供に似気にげなくいつも歩きながらも書物ほんを読んでゐるので、よくそれを見掛みかける男が
お杉の痩腕やせうでを掴んで一つ小突いたが、彼女かれちっとも動かなかった。見掛みかけは枯木のようでも容易に倒れない、さながら大地に根が生えたように突ッ立っていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そのお礼としてはいざ汽車へ乗って帰ろうという間際なぞにきまってりもせぬ見掛みかけばかり大きな土産物みやげものをば、まさか見る前で捨てられもせず、帰りの道中の荷厄介にと背負しょこませられる。
夏の町 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
見掛みかけひそかたのみ度一條ありと云をきゝ七右衞門されば先此方こなたへと一間へとほしけるに郷右衞門聲をひそめ藤五郎兄弟の事を委細ゐさいに語りければ七右衞門夫は/\とばかりにてあきれ居たりしかば建部はひざ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さりともらぬミハイル、アウエリヤヌイチは、大得意だいとくいで、仏蘭西フランス早晩そうばん独逸ドイツやぶってしまうだろうとか、モスクワには攫客すりおおいとか、うま見掛みかけばかりでは、その真価しんかわからぬものであるとか。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それはただ見掛みかけだけで、そろそろ動き出すことがある。11635
無論見掛みかけ御位みくらいが安全なようでござりますが
「いいえ、お見掛みかけ申しませんね。」
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すると見掛みかけは気の違った阿房のようで