見懸みか)” の例文
ヤナツについていってみると、なるほど微小人間が四五百人も集っている洞穴どうけつがあった。彼等は私を見懸みかけて別にさわぐでもなかった。
「へえ、不思議なもんですね。あのうらなり君が、そんな艶福えんぷくのある男とは思わなかった。人は見懸みかけによらない者だな。ちっと気を付けよう」
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
れなら、一生涯いつしやうがいに一ぐらゐへまいともかぎらない。のかはり武者修行むしやしゆぎやう退治たいぢられます。これ見懸みかけたのは難有ありがたい。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
元より御憎悪強おんにくしみつよわたくしにはさふらへども、何卒なにとぞこれは前非を悔いて自害いたし候一箇ひとりあはれなる女の、御前様おんまへさま見懸みかけての遺言ゆいごんとも思召おぼしめし、せめて一通ひととほ御判読ごはんどく被下候くだされさふらはば、未来までの御情おんなさけ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「いやに逃げるじゃないか」と執念深い刑事はかえってからみついてきた。「ところで一つたずねるが、赤ブイ仙太を見懸みかけなかったか」
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一日いちにもばうつて、田圃たんぼかはみづんでところを、見懸みかけたむらわかいものが、ドンとひとかたをくらはすと、ひしやげたやうにのめらうとする。あわてて、頸首えりくび引掴ひツつかんで
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「事件の最初、君がアパートの裏口へ廻ったときに、露地ろじに何か人影のようなものを見懸みかけたといったが、あれは男だったか、それとも女だったか、解らなかったかネ」
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
少々しょうしょう無理なねがいですがね、身内に病人があって、とても医者の薬ではなおらんにきまったですから、この医王山でなくってほかにない、私が心当こころあたりの薬草を採りに来たんだが、何、ねえさんは見懸みかけたところ
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)