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行暮
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ゆきく
むかし旅人が
路に
行暮れて、とある小社の中に仮宿すると、夜深く馬の
鈴の音が聞えてきて社の前に立ち
留り、こよいは何村に産があります。
昔
修行者が、こんな
孤家に、
行暮れて、宿を借ると、
承塵にかけた、
槍一筋で、
主人の由緒が分ろうという処。
商人で此の
節は立派に暮して居るけれど、若いうち
一時困つたことがあつて、
瀬戸のしけものを
背負つて、方々国々を売つて
歩行いて、此の野に
行暮れて、其の時
草茫々とした中に
雖然、
野路に
行暮れて、
前に
流れの
音を
聞くほど、うら
寂しいものは
無い。
行暮れて
一夜の
宿の
嬉しさや、
粟炊ぐ
手さへ
玉に
似て、
天井の
煤は
龍の
如く、
破衾も
鳳凰の
翼なるべし。
夢覺めて
絳欄碧軒なし。
芭蕉の
骨巖の
如く、
朝霜敷ける
池の
面に、
鴛鴦の
眠尚ほ
濃なるのみ。