血潮ちしほ)” の例文
けれども——代助だいすけは覚えずぞつとした。彼は血潮ちしほによつて打たるゝ掛念のない、静かな心臓を想像するに堪へぬ程に、きたがる男である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わか血潮ちしほみなぎりに、私は微醺びくんでもびた時のやうにノンビリした心地こゝちになツた。友はそんなことは氣がかぬといふふう
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たれか、——そのたれかはえないに、そつとむね小刀さすがいた。同時どうじにおれのくちなかには、もう一血潮ちしほあふれてる。おれはそれぎり永久えいきうに、中有ちううやみしづんでしまつた。………
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いへはまた石もて造り、大理石なめいしの白き血潮ちしほ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
血潮ちしほにまじる眼のひかり
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
きしかたの血潮ちしほ流れて
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
樹々の血潮ちしほ仄紅ほのくれなゐ
つめの甲のそこに流れてゐる血潮ちしほが、ぶる/\ふるへる様に思はれた。かれつて百合ゆりはなそばへ行つた。くちびるはなびらく程近くつて、強いまでいだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さあれ、空にはに見えぬ血潮ちしほしたたり
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
血潮ちしほにまじる眼のひかり
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
彼はそれを、貸借たいしやくに関係した羞恥しうち血潮ちしほとのみ解釈かいしやくした。そこではなしをすぐ他所よそそらした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
人の血潮ちしほの流るとも
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)