)” の例文
冬でもの笠を被つて濱へ出て、餌を拾つて、埠頭場はとばに立つたり幸神潟かうじんがたの岩から岩を傳つたりして、一人ぼつちでよく釣漁つりをしてゐた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
石の橋の上には、刈つたが並べて干してあつて、それから墓地の柵までのあひだは、笠のやうな老松らうしようが両側からおほひかゝつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
池には葦が伸び蒲がき、が抽んでる。遅々として、併し忘れた頃に、俄かにし上るやうに育つのは、蓮の葉であつた。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
されば行け、汝一もとの滑かなるをこの者の腰につかねまたその顏を洗ひて一切の汚穢けがれを除け 九四—九六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
舞踏室ぶたふしつまた客室きゃくしつ床上ゆかうへあつめたるばかりの燈心草とうしんぐさ)をきしは當時たうじ上流じゃうりうならはしなり。)
どつしりとした古風な石燈籠が一つこの池の水に臨んで、その邊には圓く厚ぽつたい「つはぶき」も多く集めてあつた。前手のみぎはのところに見える、あやめなぞの感じもよい。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
川の西岸にうち開けて、ひたひたに水をたゝへてゐる廣田には何やらの樣なものがいちめんに植ゑ込んである。乘合の婦人に尋ぬると、あれはルイキユウですとのことであつた。
梅雨紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
左の手に乏しくなつたじんきを繼ぎ足さうとして、手さぐりでじんきの束を求めたが、指先きに當るのは、古疊ののほつればかりなので、やツと眼が覺めた風で四邊あたりを見𢌞したが
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「畳の表にはをするのぢやないか。燈心草も畳の表になるのかい」
斑鳩物語 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
日輪寺は今の淺草公園の活動寫眞館の西で、昔は東南共にまちに面した角地面であつた。今は薪屋の横町の衝當つきあたりになつてゐる。寺内の墓地は半ば水に浸されて沮洳しよじよの地となり、を生じせりを生じてゐる。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
しよろしよろ水にのそよくらん 兆
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
むしろとし、日光を敷石としたるへや
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それは大したものではなかつたけれども、水草だの、芦だの、だのがしげつてゐて、この山の中に、ちよつと水郷を思はせるやうな趣を示してゐた。
(新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
聞けばこれは琉球から取り寄せたださうで、それを土地の人はルイキユウと呼び、稻よりもこれを作る者が多くなつてゐるさうだ。疊表其他の材料として支那の方にも行くといふ。
梅雨紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
この邊には、麻、などの畑も多い。
山陰土産 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
羊齒しだの匂、の匂がする。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
田の境のどぶにはがツンツン出て、雑草が網のやうに茂つてゐた。見てると街道には車が通る、馬が通る、をたゞおんぶした田舎のかみさんが通る、脚絆きやはんかふかけの旅人が通る。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)