藤蔓ふぢづる)” の例文
つら/\此住居すまゐを見るに、いしずえもすえず掘立ほりたてたるはしらぬきをば藤蔓ふぢづるにてくゝりつけ、すげをあみかけてかべとし小きまどあり、戸口は大木のかはの一まいなるをひらめてよこ木をわたし
しばらくして、御米およね菓子皿くわしざら茶盆ちやぼん兩手りやうてつて、またた。藤蔓ふぢづるいたおほきな急須きふすから、にもあたまにもこたへない番茶ばんちやを、湯呑程ゆのみほどおほきな茶碗ちやわんいで、兩人ふたりまへいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なんの、お前様めえさまさるとほ二十八方仏子柑にじふはつぱうぶしかん山間やまあひぢや。伐出きりだいて谿河たにがはながせばながす……駕籠かごわたしの藤蔓ふぢづるむにせい、船大工ふなだいくりましねえ。——私等わしらうちは、村里町むらざとまち祭礼まつり花車人形だしにんぎやう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
垣根の真中から不意に生ひ出して来た野生の藤蔓ふぢづるが人間の拇指おやゆびよりももつと太い蔓になつて、生垣を突分け、その大樹の松の幹を、あたかとりこを捕へた綱のやうに、ぐるぐる巻きに巻きながらぢ登つて
こゝに年歴としへたる藤蔓ふぢづるの大木にまとひたるが谷川へ垂下たれさがりたるあり、とまやまして水くむものたるにくゝしひ、此ふぢづるをたよりとして谷川へくだり、水をくみてたるの口をつめておひ