きざし)” の例文
勝平の態度には、愈々いよ/\乱酔のきざしが見えてゐた。彼の眸は、怪しい輝きを帯び、狂人か何かのやうに瑠璃子をジロ/\と見詰めてゐた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
おつるところにはたらきざしあるゆゑに陰にして陽のまろきをうしなはざる也。天地気中の機関からくり定理定格ぢやうりぢやうかくある事奇々きゝ妙々めう/\愚筆ぐひつつくしがたし。
万々一もこの二流抱合のきざしを現わすことあらば、文明の却歩きゃくほは識者をまたずして知るべし。これすなわち禍の大なるものなり。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
王政柔弱に帰し学士を保護する能はざるに至りて我国の文学漸く独立のきざしを得、其さに傾覆せんとするに至つて始めて見るべきの書あり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
あげくるしむ事大方ならず後藤は夫で好々よし/\もうゆるしてやれと聲をかけサア汝かうしるしを付て遣はすにより以來心を改め眞實まことの人間になるべし萬一又々惡心あくしんきざしたなれば其時其小鬢こびん入墨いれずみ水鏡みづかゞみうつし今日の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勝平の態度には、愈々いよいよ乱酔のきざしが見えていた。彼の眸は、怪しい輝きを帯び、狂人か何かのように瑠璃子をジロ/\と見詰めていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
山の地勢ちせいと日のてらすとによりてなだるゝところとなだれざる処あり、なだるゝはかならず二月にあり。里人さとひとはその時をしり、処をしり、きざしるゆゑに、なだれのために撃死うたれしするものまれ也。
少年時代から豪酒の素質を持ってはいたが、酒に淫することなどは、決してなかったのが、今では大杯をしきりに傾けて、乱酒のきざしがようやく現れた。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
此雪こほりて岩のごとくなるもの、二月のころにいたれば陽気やうき地中よりむしとけんとする時地気と天気とのためわれひゞきをなす。一へんわれ片々へん/\破る、其ひゞき大木ををるがごとし。これ雪頽なだれんとするのきざし也。