莞爾にこやか)” の例文
「これはこれはオースチンご老師ようこそおいでくだされました」その若い武士はこう云うと莞爾にこやかに笑って頭を下げ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
おもて入口いりくちには焦茶地こげちやぢ白抜しろぬきで「せじや」と仮名かなあらは山形やまがたに口といふ字がしるしついところ主人あるじはたらきで、世辞せじあきなふのだから主人あるじ莞爾にこやかな顔、番頭ばんとうあいくるしく
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
梅子はいとも莞爾にこやかに「剛さん、可笑をかしいのねエ、私が何時いつ貴郎あなたを信用しなかつたの、私は貴郎の様な学問も品性も優等なるおとゝのあることを、お友達にまで誇つて居る程ぢやありませんか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
とゝのへすわり居てそれと見るよりお光さんかさだめし甲夜よひからお出で有らうと待草臥まちくたびれて居りたるにと云へばお光も莞爾にこやか吾儕わたしも早く來たいのは山々やま/\なれど父親おとつさんがお寢なさらぬので家が出られずたゞ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
稚兒おさなごはゝよぶやうさしまねぎつ、坐敷ざしきにもらではるかにてば、松野まつのおもかろにあゆみをすゝめて、はや竹椽ちくえんのもとに一揖いつしふするを、糸子いとこかるくけて莞爾にこやかに、花莚はなむしろなかばけつゝ團扇うちわつてかぜおくれば
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
荒っぽい指紋が何と莞爾にこやかに明日を約束している事か
(新字新仮名) / 今村恒夫(著)
「さようさよう只今の名は葉之助殿でござったな。しかしやっぱり猪太郎じゃ。さよう少くも幼名はな」神々しい姿のその人はこう云うと莞爾にこやかに微笑んだが、「何んとそうではござらぬかな」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その時莞爾にこやかに笑いながら、副使格の乙女が膝を進めたが
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
佐々木源兵衛は莞爾にこやかに訊いた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)