色合いろあひ)” の例文
けら殿どのを、ほとけさんむし馬追蟲うまおひむしを、鳴聲なきごゑでスイチヨとぶ。鹽買蜻蛉しほがひとんぼ味噌買蜻蛉みそがひとんぼ考證かうしようおよばず、色合いろあひもつ子供衆こどもしう御存ごぞんじならん。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
けれども三千代は其方面の婦人ではなかつた。色合いろあひから云ふと、もつと地味ぢみで、気持きもちから云ふと、もう少ししづんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
汽車のうちたゞ二人ふたりだけであつた。萌黄もえぎのやうな色合いろあひ唐草模樣からくさもやうり出したシートのさまが、東京で乘る汽車のと同じであつたのは、小池に東京の家を思はせるたねになつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「大へんやはらかな、はつきりした色合いろあひで、大へん美しく、正しく、お描きになつて。」
ここで父の平凡化は別な色合いろあひを以て姿を変へたのであつた。それから『平凡治癒』といふ概念である。これは実地医家は必ず思当おもひあたるに違ひない。やまひは幾ら骨折つても癒えぬときがある。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
無論むろん婿むこがねと一所いつしよで、それは一等室とうしつはあつたかもれない。が、乗心のりごゝろ模様もやうも、色合いろあひも、いまおもふのとまつたおなじである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴方あなたはな、とそれ、かつる。あのまぶたくれなゐふものが、あたかもこれへる芙蓉ふようごとしさ。自慢じまんぢやないが、外國ぐわいこくにもたぐひあるまい。新婚當時しんこんたうじ含羞はにかんだ色合いろあひあたらしく拜見はいけんなどもおやすくないやつ
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)