舎利しゃり)” の例文
旧字:舍利
「わしは仏様を焼いて、お前さんたちのありがたがっているお舎利しゃりを取るのだ。」「木仏の頭からお舎利が出てたまるものですか。」
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
(うるさい。ブリキになったり貝殻になったり。しかしまたこんな桔梗ききょういろの背景はいけいに、楊の舎利しゃり[※4]がりんと立つのはわるくない。)
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「なアに鴻山様、たとえ体が舎利しゃりになっても、きっと、剣山まで行きついて、望みを達してまいりますから、どうか、御安心なすって下さいまし」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それでもえぬ、一生逢えぬ、骨が舎利しゃりになって、墓に草が生えるまで逢う事が出来ぬかも知れぬと書いた人がある。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
骨が舎利しゃりに成ろうが、これは何でも離れねばならぬ——が、出来るかしら? 成程手も挙げられる、吸筒すいづつも開けられる、水も飲めることは飲めもするが
世尊諸比丘びくに向いその因縁を説きたまわく、昔迦葉仏かしょうぶつ入滅せるを諸人火葬し、舎利しゃりを収め塔を立てた時、居士女こじのじょ極めて渇仰して明鏡を塔の相輪中につな
「老僧の舎利しゃりは天地を包む」と仏光国師は云われたが、よし、老師の残骸は松丘の上、楓樹の下に埋められても、その精神は宇宙に磅礴ほうはくして居るのである。
二人はあらゆる手を尽して、お綾の身に着いた品を手に入れて、お舎利しゃり様のように拝んだり、お綾の書いたものをあさって、涙を流して抱きしめたりしました。
源太十兵衛時代にはこんなくだらぬ建物に泣いたり笑ったりしたそうなと云われる日には、なあ十兵衛、二人が舎利しゃり魂魄たましい粉灰こばいにされて消し飛ばさるるわ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「ようございます、そういうことになりゃア、骨が舎利しゃりになってもやっつけます。いっそ、かたじけねえ」
顎十郎捕物帳:05 ねずみ (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
よし、相当の時間を待ってみたところで、この盛んな大家の災火の底に、かりに不祥極まる運命の人間が横たわっているとして、その一片の舎利しゃりを発見し得る望みがありますか。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
もう一つのを開いて見ると、それはからだの下半が干すばって舎利しゃりになっていた。蚕にあるような病菌がやはりこの虫の世界にも入り込んで自然の制裁を行なっているのかと想像された。
簔虫と蜘蛛 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
最初の舎利しゃり三千粒も、初めて聖武上皇に謁する時に捧呈せられている。美術品は刺繍ししゅう二つ、画像二つ、障子しょうじにかいた画が三つ、彫刻四つである。障子も彫刻も小さいものだったに相違ない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
ソッチがそんな了簡りょうけんならこっちにも覚悟がある。……憚りながら全鮮五十万の漁民を植え付けて来た三十年間には、何遍、血の雨を潜ったかわからない吾輩だ。骨が舎利しゃりになるともこの真相を
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
折柄居士は「あなたがチベットへ行くならば法王にこの釈迦牟尼如来しゃかむににょらいのお舎利しゃりを上げて貰いたい」と言って舎利をおさめた銀製の塔とその捧呈書とそれから貝多羅葉ばいたらよう経文きょうもん一巻をたくされました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
第七種(異物編)異物、化石、雷斧らいふ、天降異物、月桂、舎利しゃり
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
「ばかをいえ。あとで君の難儀は知れたこと。舎利しゃり(骨)になっても、男として、そんなまねができるものか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いや、それは性根が定まらない人間のことだ。少し心掛けのある人間なら、口外すまいと思い定めたことは、骨が舎利しゃりになっても、人に漏らす気遣いはない」
あの十力じゅうりき大宝珠だいほうじゅでした。あの十力じゅうりきとうと舎利しゃりでした。あの十力じゅうりきとはだれでしょうか。私はやっとその名を聞いただけです。二人ふたりもまたその名をやっと聞いただけでした。
あなたが骨が舎利しゃりになっても御主家の名を口外しまいと、突っぱったのも無理はない。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
仏像舎利しゃり恭敬くぎょうして得悟すると思うのは邪見である。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
私のふところにある物の中に釈迦牟尼仏しゃかむにぶつ舎利しゃり
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
いかに、自分が舎利しゃりとなって戦っても、そのうち、十名も斬れば、善戦したものといわなければならない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大塚の重三はすっかり得意でしたが、肝腎の高木銀次郎は、骨が舎利しゃりになっても白状しません。
それを知りつつ、主家の名前だけは、骨が舎利しゃりになっても口外しまいという忠義一徹。なりもふりもかまわず、礼儀も捨てて押しとおそうとなさるお心ざしには、まことに感服いたしました。
顎十郎捕物帳:10 野伏大名 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「まあ聞くがよい。舎利しゃりになっても反抗してやろうという、おぬしの気持はわかる。だが、勝てるか」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえ骨が舎利しゃりになっても、この仕返しはしねえじゃおかねえから
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それは申上げられません、骨が舎利しゃりになっても」
「会わすも会わさぬも親の権利。骨が舎利しゃりになっても、動くもんか。けえけえれ、色情狂いろきちがいめ」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)