きか)” の例文
旧字:
お島が説明してきかす作太郎の様子などで、その時はそれでけるのであったが、その疑いは護謨毬ゴムまりのように、時が経つと、またもとかえった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
如何にして造化の秘蔵に進み、粋美をほしいまゝにすることを得む、如何にして俗韻を脱し、高邁なる逸興を楽むを得む。請ふ、共に無言なる蕉翁にきかむ。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
かつて江戸町奉行がこれを撃つことを禁ぜようとしたが、津軽家がきかずに、とうとう上屋敷を隅田川すみだがわの東にうつされたのだと、巷説こうせつに言い伝えられている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ところこの九月でした、僕は余りの苦悩くるしさに平常ほとん酒杯さかずきを手にせぬ僕が、里子のとめるのもきかず飲めるだけ飲み、居間の中央に大の字になって居ると、なんと思ったか
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
亡くての今は、そのきかれざりし恨より、親としてつかへざりし不孝の悔は直道の心を責むるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
もしそのために祈りし時は必ず「もし御意みこころかなわば」の語を付せり、自己の願事ねぎごとを聴かば信じ、きかずば恨むはこれ偶像にねがいを掛けるもののなす所にして、基督信者の為すべき事にあらざるなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
「葉子さん、私は破産してしまいました。——が、まだ貴女あなたの独唱会に、経済的な援助をする位の力はあります。それは兎も角として、今晩は是非貴女あなたのお返事をきかして頂きたいのですが——」
まだファウストを読まぬ時、ファウストの話をきかされる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
下 化城諭品けじょうゆぼんいさめきか執着しゅうじゃく
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
市とS——町との間にある鉱山やまつづきの小さい町に、囲われていたことは、お島も東京を立つ前からきかされていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
静に、静に、そんな大きな声をしてきかれたらどうします。わしも彼処を開けさすのはいやじゃッたが開けて了った今急にどうもならん。今急に彼処をふさげば角が立て面白くない。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「人のめかけなぞ私死んだって出来やしない。そんな事をきかしたら、あの堅気な人が何を言って怒るかしれやしない」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)