罷在まかりあり)” の例文
益御安泰可御座愛度めでたき御儀奉存候。降而くだつて私儀無異乍及国家之御為日夜尽力罷在まかりあり候。乍失敬御安慮可仰付候。
御書かたじけなく拝見仕候。かねて願上候御認おんしたためもの、早く拝見いたし度と存じ候へども、今日もなおせき少々出で候まゝ、引きこも罷在まかりあり候。熱は既に去り申候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
一私しども兩人儀は先主せんしゆ嘉川平助以來いらいより勤仕きんし罷在まかりあり候處當主たうしゆ主税之助養子やうしに參られ候後平助儀藤五郎藤三郎の二
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
当日は騎兵の中一人、馬より落ちたるもの無ければ、此間違もなくして、上下の御為此上なき事に至るべきに、不幸にして足弱きために、今日まで無事に罷在まかりあり候。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
されど牡鹿山の城中弓矢取りては耻かしからぬ武士共罷在まかりあり候へ共、かゝる風流の会は何とやらん不案内にて物怯ものおぢやしたりけん、戦場の儀ならば功名をも争ふべけれ
それだけにては愚意わかりかね候につき愚作をも連ねて御評願いたく存居ぞんじおり候えども、あるいは先輩諸氏のいかりに触れて差止さしとめらるるようなことはなきかとそれのみ心配罷在まかりあり候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
この辺の心事は貴下平素の審美論にも一致致すべき次第一層御同情に値する事かと愚考罷在まかりあり候。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
今般大阪表の始末がら、在所表へ相聞え、深奉恐入候に付き上下一同謹慎罷在まかりあり候。抑も尊王の大義は兼て厚く相心得罷在候処不図はからずも、今日の形勢に立至り候段、恐惶嘆願の外無御座候。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それがし致仕ちし候てより以来、当国船岡山ふなおかやま西麓さいろくに形ばかりなる草庵そうあんを営み罷在まかりあり候えども、先主人松向寺殿しょうこうじどの逝去せいきょ遊ばされて後、肥後国ひごのくに八代やつしろの城下を引払いたる興津おきつの一家は、同国隈本くまもとの城下に在住候えば
此方より手紙を出しても一向返事も寄越さず、多忙か病気か無性ぶしょうか、或は三者の合併かと存候。小生僻地に罷在まかりあり、楽しみとするところは東京俳友の消息に有之、何卒なにとぞ爾後じごは時々景気御報知被下度くだされたく候。
漱石氏と私 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
勤め罷在まかりありしぞと申さるゝに願山も最早もはや覺悟の事なれば私し儀京都に居候節日野家の醫師いしやとはれ折々供も勤めし所はからずも安田平馬佐々木靱負ゆきへの惡事にくみし京都を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
愚僧は芝山内しばさんない青樹院せいじゅいんと申す学寮の住職雲石殿うんせきどの年来ねんらい父上とは昵懇じっこんの間柄にて有之候まゝ、右の学寮に寄宿つかまつり、従前通り江戸御屋敷おやしき御抱おかかえの儒者松下先生につきて朱子学しゅしがく出精罷在まかりあり候処
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
一昨日は御書を給はり、辱く奉存ぞんじたてまつり候。其節御恵贈の朝鮮産西洋種梨子なし、誠にやすらかにして美味、有難存候。彼の争議一件御筆にのせられ候由、以て当今社会の現況を知る事を得べく、楽しみ罷在まかりあり候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
なし餘り久々御疎遠ごそゑんなれば御機嫌ごきげんうかゞひ度又此方の御樣子ごやうす如何と存じ母を同道していで馬喰町武藏屋清兵衞方に罷在まかりあり候と申けるに利兵衞の心はとくよりかは持參金ぢさんきんのあるむこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)