繚乱りょうらん)” の例文
どうです、坂東には、野の花々は、繚乱りょうらんでしょうが、こんな都の花を、お内にあって眺めるのも、まんざら悪くはありますまいが
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝の黄金の光がっと射し込み、庭園の桃花は、繚乱りょうらんたり、うぐいす百囀ひゃくてん耳朶じだをくすぐり、かなたには漢水の小波さざなみが朝日を受けて躍っている。
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
にぎやかに入って来た客は印度インド婦人服独特の優雅で繚乱りょうらんな衣裳を頭からかぶり、裳裾もすそを長く揺曳ようえいした一団の印度婦人だった。
ガルスワーシーの家 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
たがいの気合がき返る、人は繚乱りょうらんとして飛ぶ、火花は散る、刃はひらめく、飛び違いせ違って、また一際ひときわ納まった時、寄手よせての人の影はもう三つばかりに減っています。
繚乱りょうらん」と云う言葉や、「千紫万紅せんしばんこう」と云う言葉は、春の野の花を形容したものであろうが、ここのは秋のトーンであるところの「黄」を基調にした相違そういがあるだけで
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ことにハナウマイのはてしない白砂のなだらかさ、緑葉び張ったパルムのこずえあざやかさ、赤や青の海草が繚乱りょうらんと潮にれてみえる岩礁がんしょうの、幾十ひろいてみえる海のあおさは
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それに似たものが繚乱りょうらんとして心を取り囲んだ。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
たれかを、呼び求めつつ、丘の繚乱りょうらんな秋草の中を、こっちへ近づいて来るものらしい。すると、二人の位置から遠からぬ草むらのうちでも
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時代は七国割拠の乱世である。剣戟はちまたに舞っているこの伴奏を受けての思想の力争——七花八裂とも紛飛繚乱りょうらんとも形容しようもない入りみだれた有様だった。
荘子 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
秋草が繚乱りょうらんとして、川に流れやらぬ髑髏を、あなめあなめと泣かせたり、尾花が手を延べて、千古浮べないというものをなぶったりしている、昼のしんかんたる景色。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小手こてをかざしてみれば、いちめんの高原植物こうげんしょくぶつ、月光とつゆ繚乱りょうらんたるなかに、ぽちりと、ひとりの少女のすがたが、ありありと立って見えた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
多数の牡獅子おじしと、牝獅子めじしと、小獅子こじしとが、おのおの羯鼓かっこを打ちながら、繚乱りょうらんとして狂い踊ると、笛と、ささらと、歌とが、それを盛んに歌いつ、はやしつつ、力一ぱいに踊るが
大菩薩峠:25 みちりやの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すると、もう秋草の繚乱りょうらんな[#「繚乱な」は底本では「※」]高原の彼方で、旗差物を打ち振るものがあった。——二百人ほどな軍馬があった。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
梨子地なしじをまいたような火の子が、繚乱りょうらんとして飛びはじめました。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
智深が法衣ころも諸肌もろはだを脱いだからだ。そしてその酒身しゅしんいっぱいに繚乱りょうらんと見られた百花の刺青いれずみへ、思わず惚々ほれぼれした眼を吸いつけられたことであろう。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曠野の秋草は繚乱りょうらんと、みな血ぶるいした。所々に、死骸の丘ができた。逃げ争って行った兵は、要害にいたたまらず、山向うの安象の町へ逃げこんだ。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
夏侯覇は、命を奉じて、わずか二十騎ほどを連れ、繚乱りょうらんの秋くらけた曠野の白露はくろを蹴って探りに行った。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
繚乱りょうらんの百花は、暴風の如く、馳け入る兵に踏み荒され、七花八裂、狼藉ろうぜきを極めた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月はまだ昇らないが満天の星は宵ながら繚乱りょうらんきらめいていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)