縫針ぬひばり)” の例文
「針でつた假名文字だ、鼈甲は柔らかいから、わけもなく傷が付く——いや待てよ、柔かいと言つても、女の使ふ縫針ぬひばりくらゐぢや、こんな形のたしかな字は書けないな」
キャラコの肌着はだぎにはちやうど適當な品です。針も糸に合つたのをりました。縫針ぬひばりの方は、おぼえをけておくのを忘れたと、あなたからスミス先生に云つて下さらんか。
午餐過ひるすぎからおつぎは縫針ぬひばりいととほして竿さをけて與吉よきちたせた。與吉よきちほか子供こどものするやうにはりげててはまたみづげて大人おとなしくしてる。しばら時間じかんつとまたねえようとぶ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
送りけるが娘お幸は今年ことし十七歳となり尋常なみ/\の者さへ山茶も出端でばなの年頃なるにまして生質うまれつき色白いろしろにして眼鼻めはなだちよく愛敬あいきやうある女子をなごなれば兩親りやうしんは手のうちたまの如くにいつくしみ手跡しゆせき縫針ぬひばりは勿論淨瑠璃三味線も心安き方へ頼みならはせ樂みくらして居ける處に一日あるひ長八は淺草觀音へ參詣なし夫より上野の大師へ參らんと車坂くるまざか
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「この櫛には、わけのわからない文字が彫つてある。最初は、女の手で縫針ぬひばりで彫つたものと思つたが、縫針では滑つて、ううまく彫れるものではない。これは矢張り飾り屋などで使ふタガネで彫つたものだ」