すべて)” の例文
旧字:
しかるにおうとのぞみは、ついえずたちまちにしてすべてかんがえ圧去あっしさって、こんどはおも存分ぞんぶん熱切ねっせつに、夢中むちゅう有様ありさまで、ことばほとばしる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
客のすべてが帰った後、耳飾を納めた箱を持って、自分の寝室へ這入ったそうで、それから二時間も経ったろうか、博士の寝室から血を吐くような断末魔の叫声さけびごえが聞えて来た。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
記者思うに不幸なる大河の日記に依りて大河のすべてを知ることあたわず、何となれば日記はすなわち大河自身が書き、しかしてその日記には彼が馬島に於ける生活を多くしるさざればなり。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
我ら意志の深底より世と世のすべて捨去すてさりてのち始めて我らの心霊も独立し世も我らのものとなるなり、しにき、すてて得る、基督教の「パラドックス」(逆説)とはこの事をいうなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
ゆえし非を非と直言したのが侮辱になれば、すべての忠告と云う者は皆君の所謂いわゆる無礼なものだ。若しそれで君が我輩の忠告をいかるのならば、我輩一言もない、つつしんで罪を謝そう。がそうか
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
で、そのいえすべて什具じゅうぐとは、棄売すてうりはらわれて、イワン、デミトリチとその母親ははおやとはついぶつとなった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何故かというに窓を通して、クウフ王にって建立されたギゼーの金字塔が見えるからで、この金字塔は、のあらゆる、すべての金字塔と比較して、最大最高のものであった。
木乃伊の耳飾 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)