)” の例文
子守りの家では、亭主に死なれた母親が、棕櫚縄しゅろなわなどをって、多勢の子供を育てていた。お銀はその家の惨めな様子をよく知っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いたずらに自尊の念と固陋ころうけんり合せたるごとき没分暁ぼつぶんぎょうむちを振って学生を精根のつづく限りたたいたなら、見じめなのは学生である。
作物の批評 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お多福め、苦しがりやがって俥屋の尻が何だとか……はははは、腹の皮をらしやがった。だが、そう見られるほど意気に出来てりゃしようがねえ
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
脚の下の深い谷底では、真青なとろが幾筋かの太い水脈をり合せ綯り戻して、渦を巻きながら押し黙って流れている。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「油ばかりお前のものであれば本を読んでもよいと思っては違う、お前の時間も私のものだ。本を読むなどという馬鹿なことをするならよいからその時間に縄をれ」
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
風はどこからか二筋にれて来たのが、急に擦違すれちがいになってうなるような怪しい音を立てて、また虚空遥こくうはるかのぼるごとくに見えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
叔母の健康が、またりが戻ったように悪い方へ引き戻されて来た。暮から春へかけての叔父の一身の動揺が、一家の人々にも差し響きを起さずにはいなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
平岡はくちむすんだなり、容易に返事をしなかつた。代助は苦痛のどころがなくて、両手のたなごゝろを、あかれる程んだ。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
自分では腕にりをかけている気であった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雨滴あまだれ絶間たえまうて、白い爪が幾度かこまの上を飛ぶと見えて、こまやかなる調べは、太き糸のと細き音をり合せて、代る代るに乱れ打つように思われる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御承知でもあらっしゃろうがなかなか玉を磨ったり針金をったりするような容易たやすいものではなかったのでがすよ
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すこぶる愉快ゆかいだ。山嵐の証明する所によると、かんじんりを二本より合せて、この力瘤の出る所へ巻きつけて、うんと腕を曲げると、ぷつりと切れるそうだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
爺さんは笑いながら腰から浅黄の手拭てぬぐいを出した。それを肝心綯かんじんよりのように細長くった。そうして地面じびたの真中に置いた。それから手拭の周囲まわりに、大きな丸い輪をいた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
隙間すきまなくしぶれた劈痕焼ひびやきに、二筋三筋あいを流す波をえがいて、真白ましろな桜を気ままに散らした、薩摩さつま急須きゅうすの中には、緑りを細くり込んだ宇治うじの葉が、ひるの湯にやけたまま
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
命のあるうちにとまた旧稿に向って見たが、なわは遅く、逃げる泥棒は早い。何一つ見やげも置かないで、消えて行くかと思うと、熱さえ余計に出る。これ一つまとめれば死んでも言訳いいわけは立つ。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
代助は苦痛の遣り所がなくて、両手のたなごころを、あかれる程んだ。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)