細工ざいく)” の例文
「その簪は、お崎の大事にして居る、つまみ細工ざいくの簪で、——私が買つてやつた品で、お崎が大事にして居るんだと申します」
ろう細工ざいくのようなりんごや、青い葉の上にならべられた赤いいちごなどが、細い水玉みずたまをつけてきらきらとかがやきます。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
と、透かして見ると、油のような血が流れていて、そこに浮いているつま細工ざいくの一枚の花櫛はなぐし
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せっかくとらえた賊は、血のかよった人間ではなくて、ろう細工ざいくの人形だったのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
自分は経験のある或る年長者から女の涙に金剛石ダイヤはほとんどない、たいていは皆ギヤマン細工ざいくだとかつて教わった事がある。その時自分はなるほどそんなものかと思って感心して聞いていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この青年せいねんは、むらへやってきて、むすめたちに、かいがら細工ざいくや、かんざしや、香油こうゆのようなものをならべてあきなったのです。そして、ときに、かれやまのあちらの国々くにぐにめずらしいはなしなどをかせたりしました。
北の不思議な話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けがれのない少年しょうねんたましいをほめたたえ、これをけが大人おとな生活せいかつみにくさ、いやしさをにくのろうソログーブの気持きもちは、レース細工ざいくのようにこまやかな、うつくしい文章ぶんしょうで、こころにくいまでにうつされている。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
さて、ろくろ細工ざいく職人しょくにんがしごとをならいおぼえて、いよいよ修業しゅぎょうの旅にでかけようというとき、親方おやかたは、おまえはたいへんよくはたらいたからといって、ふくろをひとつくれました。そして
では何をするかと言えば、K君やS君に来てもらってトランプや将棊しょうぎひまをつぶしたり、組み立て細工ざいく木枕きまくらをして(これはここの名産です。)昼寝をしたりするだけです。五六日前の午後のことです。
手紙 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「あら、そう、あのよせぎれ細工ざいくの手箱が」
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
眞鍮しんちゆうの矢立が一梃、それにいろ/\の小道具にまじつて女の兒のかんざしらしい古いまみ細工ざいくやら、汚れた赤い巾着やら、憐れ深い品々が交つてゐるではありませんか。
ああ、これが生きた人間でなく蝋細工ざいくだなんて、そんなバカなことがあるものか。
悪霊物語 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あわてて駆け出したガラッ八の足許へ、その軽率をとがめるように、カラリと落ちたのは、その頃の下町娘が好んでした、つまみ細工ざいくの美しいくしではありませんか。
「お崎が曲者の仲間なら、大事にしてゐた、つまみ細工ざいくの簪などをして、聖天堂へ入るでせうか」
無駄を言ふな、——ところで、その話から思ひ付いて、箱根細工ざいくの金箱をこしらへたのだよ。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
金之助に箱根細工ざいくの箱を叩かせたことがあるだらう、あの時さとつたのだよ。一體人が物を
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)