粗服そふく)” の例文
これが町奉行の大岡越前守とは知る由もない栄三郎、よし零落おちぶれて粗服そふくをまとうとも、面識のない武士には対等に出る。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
小文治は、家に取ってかえすと、しばらくあって、粗服そふくながら、たしなみのある旅支度たびじたくに、大小を差し、例の朱柄あかえやりをかついで、ふたたびでてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見る者なかりしとこゝ浪人體らうにんていさむらひの身には粗服そふくまとひ二月の餘寒よかんはげしきに羊羹色やうかんいろの羽織を着て麻のはかま穿はきつかはづれし大小をたいせし者常樂院じやうらくゐんの表門へ進みいらんとせしが寺内の嚴重げんぢうなる形勢ありさま
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
あわて押止め然ば其段いま一應いちおう申上べしまづ/\御待下されと待せ置ておくへ行き暫時ざんじにして出來り然らば其儘そのまゝにて對面たいめんあるべしとの事なりと告れば伊賀亮はも有べしとやが粗服そふくのまゝ天忠に引れて本堂の座敷ざしきへ到ればはるか末座まつざに着座させられぬ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
くだしおかれたり率御着用有りて然るべしとのべければ伊賀亮呵々から/\わら貴僧きそう御芳志ごはうしかたじけなけれど未だ御對面もなき中に時服じふく頂戴ちやうだいするいはれなし又拙者が粗服そふくで御對面なされ難くば夫迄の事なりおして拙者より奉公は願ひ申さずと斷然きつぱり言放いひはなし立上るいきほひに常樂院は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)