かき)” の例文
次の日は早朝から家を出て、また引っ返してかきの外から窺っていると、一人の少女が甕の中から出て、かまどの下に火を焚きはじめた。
秋はここにもくれないに照れる桜の葉はらりと落ちて、仕切りのかき茶山花さざんかかおりほのかに、線香の煙立ち上るあたりには小鳥の声幽に聞こえぬ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
夜中ものすごき道を帰りければ、傍らのかきの上より、首の長き頭の巨なる妖怪、人に向かって動揺する状なり。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
かきの外の畑では、まだ晩蒔おそまきの麦を蒔いて居る。向うの田圃では、ザクリ/\鎌の音をさして晩稲おくてって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きょうも朝から、のような銀糸がいちめんに煙って、かきいばらの花も、ふっくらと匂いかけている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
みたま因縁いんえんもうすものはまことに不思議ふしぎちからっているものらしく、これが初対面しょたいめんでありながら、相互おたがいあいだへだてのかきはきれいにられ、さながらけた姉妹きょうだいのように
かきの下に紅いてふきの落ちているのが見えた。陳は女の何人だれかが落して往ったのだろうと思って、喜んで袖の中に入れて、亭の中へあがって往った。そこにはつくえの上に硯や筆が備えてあった。
西湖主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もの芽出るかきの外には電車行く
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
おぼつかなくもかきに沿い、樹間このまをくぐりて辿たどりゆけばここにも墓標新らしき塚の前に、一群ひとむれ男女なんにょが花をささげて回向えこうするを見つ、これも親を失える人か、あるいは妻を失えるか、子を失えるか
父の墓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それはいいですが、心配なのは武男君の健康です。もしもの事があったらそれこそ川島家は破滅です、——そういううちにもいつ伝染しないとも限りませんよ。それだって、夫婦というと、まさか叔母さんかき
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
昼顔の花もとび散るかきを刈る
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
老婦人が去った後、ひさごかきでかこってふたをかぶせて置くと、虫は俄かに変じて犬となった。犬の毛皮には五色ごしきあやがあるので、これを宮中に養うこととし、瓠と盤とにちなんで盤瓠ばんこと名づけていた。
かきの豆赤さ走りぬいざ摘まん
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
古竹に添へて青竹かき繕ふ
六百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)