)” の例文
「おれは急に西へ立つから、お前はお前で、別に身の落ちつきを考えなおすがいい」と、いわんばかりな、拍子ぴょうしもない言葉。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし下町の目抜と山の手のぱなとは地価のけたが違う。新太郎君の家も、二百坪足らずだが、日本一の銀座の地主さんだ。悲観することはない。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
のどの骨がび出し、おとがいが反り、頬が高く、唇が厚く、目鼻がすごく、顔の色が黒く、いかさま逞しそうな体つきで、次には私が話しましょうと云いながら
三人法師 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたくしただちに統一とういつめて、いそいで滝壺たきつぼうえはしますと、はたしてそこには一たい白竜はくりゅう……爛々らんらんかがや両眼りょうがん、すっくとされた二ほんおおきなつのしろがねをあざむくうろこ
長羅の正しくがった鼻と、馬の鼻とは真直に耶馬台を睨んで進んでいった。数千の兵士たちは、互に敵となってかたまった大集団を作りながら、声をひそめて彼の後から従った。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
角店のこの家はッつきが広い土間、その他は外から余り見えない。階下と二階の戸袋は化粧塗りの、漆喰細工しっくいざいくで、階下は家号を浮きあがらせた黒地に白、二階は色漆喰の細工物で波に日の出
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
頬が落ちこけて、鼻がんがって、眼光竜鬼りゅうきの如しとある。おまけに蓬髪垢衣ほうはつこうい骨立悽愴こつりゅうせいそうと来ていたんだからたまらない。袖を引かれた女はみんな仰天して逃げ散ってしまう。これを繰り返す事累月るいげつ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
八五郎のせりふは、相變らず拍子ぴやうしもなく彈みきつて居ります。
「変らぬのは、悪四郎、おぬしじゃないか。……もう寝所に入りかけていたところだったよ。びっくりしたわさ。あいかわらず拍子ぴょうしもない」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう、はしッこいのが、いつのまにか、高い枯木のさきじのぼっていて、物見の役を承っている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)