神籤みくじ)” の例文
「お徳はお神籤みくじを引きに行きましたよ。お秋は大方番所へでもお願いに行ったんでしょう、親分さんが来て下すったところをみると」
神籤みくじを取れば凶と出る。奥方はもう堪まらなくなって、何とかして吟味に出ない工夫はあるまいかと、家来の平助にそっと相談した。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
神籤みくじのために、嫌々ながら、東下論に従っていた恭順論者は、再び自説を主張し始めた。かくて、一藩はまたもや激しい混乱に陥った。
乱世 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
占いやお神籤みくじはこれまでにも、たびたび引いて見たことがある。磯野との縁が切れそうになった時も、わざわざ水天宮で御籤みくじを引いた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
怖ろしい運命の神籤みくじでもひくように、お綱が、こわごわと、その一通を手に拾ってみると、なつかしや、死んだ母の名。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神籤みくじに何の執着もなかったお延は、突然こうして継子とたわむれたくなった。それは結婚以前の処女らしい自分を、彼女におもい起させる媒介なかだちであった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お豊は乗って来た車から急に雷門かみなりもんで下りた。仲店なかみせ雑沓ざっとうをも今では少しも恐れずに観音堂へと急いで、祈願をこらした後に、お神籤みくじを引いて見た。古びた紙片かみきれ木版摺もくはんずり
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
第四種(卜筮ぼくぜい編)易筮えきぜい亀卜きぼく銭卜ぜにうら歌卜うたうら太占ふとまに口占くちうら辻占つじうら兆占ちょうせん夢占ゆめうら御鬮みくじ神籤みくじ
妖怪学講義:02 緒言 (新字新仮名) / 井上円了(著)
その八五郎が、美しい下女のお菊の動靜を見張つてゐるうち、淺草の日參と、お神籤みくじと、くめ平内へいない樣の格子のなぞを見付けたのです。
「もちろん心配して、お神籤みくじを引いたり、うらないに見て貰ったりしているんですが、どうもはっきりした事は判らないようです」
半七捕物帳:69 白蝶怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
とよは乗つて来た車から急に雷門かみなりもんりた。仲店なかみせ雑沓ざつたふをも今ではすこしもおそれずに観音堂くわんおんだうへと急いで、祈願きぐわんこらしたのちに、お神籤みくじを引いて見た。古びた紙片かみきれ木版摺もくはんずり
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
発作ほっさが静まった時、継子は帯の間に隠した帙入ちついり神籤みくじを取り出して、そばにある本箱の抽斗ひきだしへしまいえた。しかもその上からぴちんとじょうおろして、わざとお延の方を見た。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「神慮にまかすという意味いみは、神籤みくじでも引いてめようということであるか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう一つ、奧方は昨日確かに築土つくど八幡樣へお詣りに行つて、お神籤みくじを引いて居ますよ。あの通り目に立つ人で、多勢が見てゐます。
お福はお神籤みくじとか占いとかいうものを信じるたちで、田町の次郎吉のうちへ縁付いている間にも、観音さまへ行ってお神籤を取ったり、白雲堂へ寄って占ったりしていたので
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「今日の予言はお神籤みくじじゃないのよ。お神籤よりもっとえらい予言なの」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
尾張春日井郡の丹羽勘助を抱きこみにやった今井検校けんぎょうもついきのう、恥辱を与えられてむなしく帰ってきたばかりだ。——秀吉は、尾藤甚右からのてがみを、神籤みくじの封を切るような心地でひらいた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八五郎は引入れられる心持で、疊の上へ延べたお神籤みくじを見入りました。平次の言葉の奧の奧には、不可解な謎がひそんで居さうだつたのです。
廓という世界に生きている人たちに対しては、うらないやお神籤みくじが無限の権力をもっていた。
箕輪心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そして築土つくど八幡樣へお廻りになつて、お神籤みくじをお引きになつた、お神簸は吉であつたのに、凶であつたと仰しやいました。
わたしは試みに一銭銅貨を入れてみると、カラカラという音がして、下の口から小さく封じた活版刷のお神籤みくじが出た。あけて見ると、第五番凶とあった。わたしはそれが当然だと思った。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「二人を殺したのは、六十三番凶の神籤みくじを持って、明神前の卜者うらないへそのこころを解いてもらいに行った奴——」
「いや、大抵はわかりました。お乳母さんの事もまあ心配することは無いでしょう。それからもう一つ訊きたいのは、そのお福はうらないに見て貰うとか、お神籤みくじを頂くとか、そんな事をしますかえ」
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「二人を殺したのは、六十三番凶の神籤みくじを持つて、明神前の卜者うらなひへそのこゝろを解いてもらひに行つた奴——」
お岩稲荷のお神籤みくじを取ってみたらば、凶と出たということでした。
蜘蛛の夢 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
明日はいよ/\主人將監が歸るといふ日、錢形平次は到頭青いお神籤みくじの曲者——實は久野將監しやうげんの家來進藤勝之助を本所相生あひおひ町の隱れ家に突きとめてしまひました。
「それどころぢやない、娘は赤いお神籤みくじを結ぶ時、前にあの格子かうしに結んであつた、青いしるしのあるお神籤を解いて持つて行つたよ。——それに氣が付かなかつたのか」
「幸ひ六十三の凶をお神籤みくじと氣がついて、下手人と金と一緒に見つけたのは、飛んだ拾ひ物さ」