硝煙しょうえん)” の例文
しかし塹壕の一線近くまで近づくやいな、そこの蔭からいちどに起った銃声と硝煙しょうえんが、たちまち城兵の姿をばたばたと野に倒した。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これなら十分に初速も出るし、また電気でとびだすのだから、硝煙しょうえんや噴射瓦斯ガスのため地上の施設が損傷する心配もなかった。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
長く沈黙を守っていた防寨ぼうさいは、おどり立って火蓋ひぶたを切った。七、八回の一斉射撃いっせいしゃげきは、一種の憤激と喜悦とをもって相次いで行なわれた。街路は濃い硝煙しょうえんに満たされた。
それから——それからは未曾有みぞうの激戦である。硝煙しょうえんは見る見る山をなし、敵の砲弾は雨のように彼等のまわりへ爆発した。しかしかたは勇敢にじりじり敵陣へ肉薄にくはくした。
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
というのは、時計の蓋のガラスをしらべてみましたら、表面にピストルから発射された硝煙しょうえんすすがついておりました。これはピストルをごく近いところから発射した証拠です。
玉振時計の秘密 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
ぱっと、敵の前で硝煙しょうえんの立つのが見えた。三騎のうち二騎まで落ちた。が、うちの一騎は程なく駈け戻り、床几の前に報告した。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それに応じて、わが空中部隊も、ここを先途せんどといさましい急降下爆撃をくりかえします。地上は硝煙しょうえんにつつまれ、あたりはまっくらになりました。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
一面に銃剣を逆立て襲歩で進んできた集団は、不可抗な力をもって寄せてき、襲撃縦隊の密集した先頭は、斜面の上に硝煙しょうえんの中から現われてきた。こんどはもはや最後であった。
呂宋兵衛るそんべえ怒号どごうしたとたんに、ズドンッ! と一発、つづいてまた一発のたま! シュッと、硝煙しょうえんをあげて伊那丸いなまるの耳をかする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
硝煙しょうえんが晴れるのを待って、三人はいま射撃した透明のかべがどんなになったであろうかと、その方をながめた。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
漠々ばくばく、立ちこめる硝煙しょうえんれるを待たず、次には、間髪をいれず、鉄槍鉄甲の武者が敵へ向って、その下をいくぐっていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、それは毒瓦斯ではなく、単に硝煙しょうえんであった。破甲爆弾はこうばくだんが、この防空壕の、すぐわきに墜ちたのだった。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「……ウッ……つつつ……」とあけを片手に抱きしめながら、硝煙しょうえんを離れた姿は、ドンと、仰むけに地ひびきをうった。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、灼鉄と硝煙しょうえんと閃光と鳴動めいどうとの中に包まれたまま、爆発するような歓喜かんきを感じた。その瞬間に、彼から、仏天青フォー・テンチンなる中国人の霊魂れいこんと性格とが、白煙はくえんのように飛び去った。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
硝煙しょうえんぐと、なおさら彼らの気はそぞろにたけみだれた。この状態は、何度戦場を踏んだ卒でも、捨身になりきれるまでの間には、どうしても一度は通る気持だった。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうなると、太平洋というそのおだやかな名は、およそ縁どおいものとなり、硝煙しょうえんと、破壊した艦隊の漂流物ひょうりゅうぶつと、そしておびただしい血と油とが、太平洋一杯を埋めつくすだろう。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
檜谷ひのきだにいちめんの暗緑色あんりょくしょく木立こだちのあいだから、白い硝煙しょうえん湯気ゆげのようにムクムクと大気たいきへのぼる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドーンと木魂こだま返しにひびいてきた刹那、はッと眼をこすって見直すと、空に躍った提灯の行方は知れず、それを持っていた弦之丞の影もあらず、ただ、強い火薬の匂いと、白い硝煙しょうえんとが
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
亀山かめやま出城でじろせき国府こうの手足まで、むごたらしくもぎとられた滝川一益たきがわかずます、そこに、死にもの狂いの籠城ろうじょうをする気で、狭間はざまからはブスブスと硝煙しょうえんをあげ、矢倉やぐらには血さけびの武者をあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)