破目やれめ)” の例文
壁の裏が行方ゆくえであらう。その破目やれめに、十七日の月は西に傾いたが、よる深く照りまさつて、ぬぐふべき霧もかけず、雨も風もあともない。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そばへ寄るまでもなく、おおきな其の障子の破目やれめから、立ちながらうち光景ようすは、衣桁いこうに掛けた羽衣はごろもの手に取るばかりによく見える。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
袈裟けさをはずしてくぎにかけた、障子しょうじ緋桃ひもも影法師かげぼうし今物語いまものがたりしゅにも似て、破目やれめあたたかく燃ゆるさま法衣ころもをなぶる風情ふぜいである。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふと、生垣をのぞいたあかるい綺麗な色がある。外の春日はるびが、うららかに垣の破目やれめへ映って、娘が覗くように、千代紙で招くのは、菜の花にまじ紫雲英げんげである。……
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
即ち襖の破目やれめとおして、一つ突当って、折屈おりまがった上に、たとえば月の影に、一刷ひとはけいろどった如く見えたのである。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すなはふすま破目やれめとほして、ひと突當つきあたつて、折屈をりまがつたうへに、たとへばつきかげに、一刷ひとはけいろどつたごとえたのである。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
泰助は昼来て要害を見知りたれば、その足にて直ぐと赤城家の裏手にき、垣の破目やれめくぐりて庭に入りぬ。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
破目やれめや節穴の多い板戸の前を抜けて、総井戸の釣瓶つるべがしとしとと落つる短夜のしずくもまだ切果きれはてず、小家がちなる軒に蚊の声のあわただしい湯の谷を出て、総曲輪まで一条ひとすじこみちにかかり
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
此の声はしらを動かして、黒燻くろくすぶりの壁、其のみのの下、あわせをかけてあつたところくだん巌形いわおがた破目やれめより、岸破がば摚倒どうだおしにうちへ倒れて、炉の上へ屏風びょうぶぐるみ崩れ込むと、黄に赤に煙がまじつてぱっ砂煙すなけむりあがつた。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)