たん)” の例文
いま帝みずからご進発あられてもそのたんを補うほどの効果は期し難く、万一、さらにまた敗れんか、魏一国の生命にかかわりましょう。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今、世の人心として、人々ただちに相接すれば、必ず他のたんを見て、そのちょうを見ず、己れに求むること軽くして人に求むること多きを常とす。
学者安心論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これもわたしんだだけの範圍はんいでいへば、日本では里見弴さん、久保田万太郎さん、豐島與志雄さんがいづれもたん篇小せつの中に球突塲たまつきば題材だいざいにしてゐる。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ふすまに張ってあるたん冊まで引剥ひっぺがして了ったんですからネ……そういう中でも、豊世の物だけは、一品だって私が手を触れさせやしません……まあ、母親さんが居なくて、かえって好かった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
太祖れんていめて曰く、宋景濂ちんつかうること十九年、いまかつて一げんいつわりあらず、一人いちにんたんそしらず、始終無し、たゞに君子のみならず、そもそも賢とう可しと。太祖の濂をることかくの如し。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
(人にはかならずたんがある。短があれば短を補い、悪癖があれば悪癖を矯正し、ひとかどにして用うるのが主の勤めでもある)
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紫紐むらさきひも丹三たんぞう、赤星重兵衛じゅうべえなどと、第二の緑林りょくりんの徒を糾合きゅうごうして、東海に白浪の悪名をほしいままにしたのは、それから彼が二十九歳に刑刀をうけるまでのたん生涯の話で
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、そのたんたすけ合っていてくれるという風だったのである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)