真正ほんとう)” の例文
旧字:眞正
「その歯一本さ。歯一本と真正ほんとうに悟れば、虚心坦懐きょしんたんかい光風霽月こうふうせいげつ抜いて貰いながら所得税の申告も書ける。そこまで行かなければ駄目だよ」
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一つくちもうしたら、真正ほんとう神様かみさま人間にんげんとの中間ちゅうかんちてお取次とりつぎの役目やくめをつとめるのが人霊じんれい仕事しごと——。まあそれくらいかんがえていただけば、大体だいたいよろしいかとぞんじます。
それは真正ほんとうのロシア更紗で、一面の真紅まっかな地に白の水玉が染め抜かれてあった。なかにはこまかな刺繍を施した布面に高まりを見せた高価なハンカチなどがあった。
性に眼覚める頃 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
真正ほんとうの原因であったかもしれないが、本人の藤吉はその名をひそかに誇りにしているらしく、身内の者どもは藤吉の鳩尾みぞおちに松葉のような小さな釘抜の刺青のあることを知っていた。
遊びというものゝ味が真正ほんとうに分ったなら、遊びは面白いことでなくて恐いことである。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「いや、こいつも駄目だ……して見ると真正ほんとうの幸福ってものはえもんだなア」
幻想 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
「あの菅笠は、真正ほんとうで御座るか」
大岡越前の独立 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
乃公おれは三日蔵の中へ入れられて今日漸く堪忍して貰った。伯父さんは未だ寝ている。全く乃公が悪るかった。真正ほんとうに気の毒でならない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
つまるところここまでが、真正ほんとう意味いみ神様かみさまなので、わたくしどものように帰幽後きゆうごかみとしてまつられるのは真正ほんとうかみではありませぬ。ただ神界しんかいせきいているというだけで……。
それよりか早く左官屋さかんやを呼んで来て、一間四方ぐらいの煙突を拵えればいいんだ。手を火傷したり叱られたり真正ほんとうに馬鹿馬鹿しい。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「女が何うしたんですよ。真正ほんとうやな子ね。お祖父さんが、この子は男だから豪いなんて仰有るものだから、好い気になっているんだわ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「歌さんがね、斯ういいましたよ、彼の何ですって、伯父さんは大変吝嗇だって、そして煮ても焼いても食えないんですって、真正ほんとうですか」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「けれども面白いんですよ。釣竿さえ持っていればニコ/\ものです。あれで鯛を釣って来れば真正ほんとうのお恵比須えびすさんでさあ」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「女の子は何うせくれてしまうのだけれど、男の子は真正ほんとうの跡取だから、万一間違があると玉なしになる。用心の為めもう一人あってもいよ」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「何か正業についてくれると宜いんだが、大きなことばかり言って彼方此方あっちこっち飛んで廻って歩いて、真正ほんとうに兄弟泣かせだよ」
或良人の惨敗 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
受験生の境遇に真正ほんとうの同情が出来るのはつぶさに受験生の経験を嘗めた者ばかりだ。兄さんの俊一君は常に二郎君の為めに執成とりなし役を勤めている。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「考えて見ると急いで飛び下りるにも及ばなかった。病院は病院で、そのまゝ乗って橋口君のところへ行けば宜かったのに、真正ほんとうに馬鹿な話さ」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
私は又お気に入らないことには御返辞をなさらない癖だと存じて居りましたが、真正ほんとうに聾耳じゃ心細いわ。俄か聾耳は……
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「活字の信者です。活版で刷ってさえあれば何でも真正ほんとうと思い込む馬鹿ものです。地方にはういう人がよくありますよ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
真正ほんとうに上る気で伺ったんじゃないんですもの。そこまで来たのを幸い、原田君にお宅を紹介する積りで、丁度御門前へ差しかゝったところです」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
真正ほんとうに然うですよ。兎に角その小僧さんのお母さんが手向けの為めに此処へ紅葉を植えたのが鹿に紅葉の起原おこりだというのですから益〻心細いわ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一晩寝られなかったよ。真正ほんとうに神経衰弱になるのかと思ったくらいだ。しかし今日は悉皆すっかり持ち直したから、君も安心して僕の見識を立てゝくれ給え。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「好いところさ。東京市内にはとてもこんなところはない。しかしいやに寒いね。京都は底冷そこびえがするといったが真正ほんとうだ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「兎に角、その為にお父さんの信用がなくなったんでしょう。真正ほんとうに些っともありませんよ。僕は怠けものだけれど、裏表がないからいんですって」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
膏薬代丈けで済めば結構だと思いましてね、木本君は、『おい車屋さん、お前さんは真正ほんとうに腰が立たないのかい?』
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「私の方からお願い申上げますのよ。何分七匹ですから縁づけるのが一苦労でございます。真正ほんとうに助かりますわ」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「教え振りを拝見に上るのはお弟子入りも同じことじゃありませんの? 可怪おかしな人ねえ、あなたは。同じお稽古をなさるなら真正ほんとうの先生をお頼みになっちゃ如何?」
好人物 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「我輩のは真正ほんとうに止めようと思えば止められないこともない積りだが、何うもいかん。若い時分部下の面前で宣誓して断然止めたんだが、間もなく感ずるところあって又始めたのさ」
閣下 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「僕さ。僕のところへは尾崎さんの唾が飛んで来た。真正ほんとう謦咳けいがいに接したのは僕さ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
真正ほんとうだよ。一番小さい人が『この水は何処から来るの?』って、貴公子に訊いたのさ。すると貴公子が『君、この水は何処から来る?』って僕に訊いた。『僕の村から涌いて来ます』って、僕が答えたのさ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「それは聞かないでもないが、真正ほんとうか知ら?」
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
真正ほんとうに然うですね」
小問題大問題 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
真正ほんとうだぜ」
村の成功者 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)