あがた)” の例文
旧字:
ごうの北に八ツ面山おもてやまというのがある。そこから雲母きららを産するので、遠い昔からこの地方を、吉良きらあがたとよび、吉良の庄とも唱えてきたのじゃ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思ふ人を遠きあがたなどにやりて、あけくれ便りのまちわたらるゝ頃、これをききたらばいかなる思ひやすらんと哀れなり。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
豊雄一七八やや此の事をさとり、涙を流して、おのれ一七九更に盗をなさず。かうかうの事にて、あがた何某なにがしが、さきつまびたるなりとて得させしなり。
真女児はじぶんはこの国の受領の下司しもづかさあがた何某なにがしが妻であったが、この春夫が歿くなったので、力と頼むものもない。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
海に近いあがたの里の野原では、寒い霜夜の月の明方ごとに、斯うして物の緑が土に帰して居たのであらうが、或時或旅人が通り過ぎて、之を美しいと見るのは瞬間であるなどゝ
ひじりの家 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
あがた赤魚あかえ月丸つきまるさば小次郎こじろう、お小夜さよの六人である。お小夜だけが女である。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
なまよみの甲斐かいの国、山梨やまなしあがたを過ぎて、信濃路しなのじに巡りいでまし、諏訪すわのうみを見渡したまひ、松本の深志ふかしの里に、大御輿おおみこしめぐらしたまひ、真木まき立つ木曾のみ山路、岩が根のこごしき道を
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……村にあがたにかの児らの 二百とすれば四万人
文語詩稿 一百篇 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
国のあがたの数々を
あがたのなにがしという者の妻にむかえられて、夫と一緒にこの国に下ってまいりまして、はや三年になります。
南朝絶滅の総ざらいのいくさととなえ、こう師直もろなお師泰もろやすを二大将とする軍のほか、さらに仁木、今川、細川、あがた、宇都宮、武田、佐々木(道誉)などの諸将をも
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は新宮のほとりに住むあがた真女児まなごと云うものであると云って、その傘をさして帰って往った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「新宮の辺で、あがた真女児まなごの家はどこか、とおたずね下さいませ。そろそろ日も暮れそうです。では、お言葉に甘えて、御親切を頂戴し、この傘を拝借して帰りましょう」