相識あいし)” の例文
この人生れてより下二番町しもにばんちょうに住み巌谷小波いわやさざなみ先生の門人とは近隣のよしみにて自然と相識あいしれるがうちにも取りわけ羅臥雲らがうんとて清人しんじんにて日本の文章俳句を
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
つぎ硯友社けんいうしやるにいて、第二の動機だうきとなつたのは、思案外史しあんがいし予備門よびもん同時どうじ入学生にふがくせい相識あいしつたのです、其頃そのころ石橋雨香いしばしうかうつてました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
女は暑中休暇に帰省している親類先のその男の家へ、養蚕の手助けに行っているうちに、男と相識あいしるようになった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
人々は巨勢に向ひて、はるばるぬる人と相識あいしれるよろこびをべ、さて、「大学にはおん国人くにびとも、をりをり見ゆれど、美術学校に来たまふは、君がはじめなり。 ...
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
栗本鋤雲くりもとじょうん翁はみずから旧幕の遺臣いしんを以てり、終始しゅうしその節を変ぜざりし人にして、福沢先生と相識あいしれり。
瘠我慢の説:01 序 (新字新仮名) / 石河幹明(著)
イタリーの誇りとも言うべきスカルラッティ父子と相識あいしり、せがれドメニコ・スカルラッティと、オルガンの演奏を競って勝ち、二人は水魚の思いがあったという逸話も
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
こんなことを云っているうちに、噂のぬし帯剣たいけんからめかしながら入って来た。近所の人であるから、忠一ともかね相識あいしっているのである。双方の挨拶はかたの如くに終った。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
わかってみれば、それは上野原以来の相識あいしれる人でした。すなわち、道に悩んで一杯の水を求めた人が兵馬で、快くそれを与えたのみならず、温き一夜の宿もかしたのがお雪ちゃんであります。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
籐椅子とういすに背中合せに相識あいしらず
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
竹渓は精里の男侗庵とうあんしゅうとに当る鈴木白藤とも相識あいしっていた。「清風館集。是日会者空空、白藤、南畝諸子凡七人。」
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
当時楽壇の中心人物メンデルスゾーンと相識あいしり、一方クララとの愛が生長して、クララの父ヴィークに結婚の許しを求め、手痛い反対を受けたりしたのもその頃である。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
手に入るは卑しき「コルポルタアジュ」ととなうる貸本屋の小説のみなりしを、余と相識あいしる頃より、余がしつるふみを読みならいて、ようやく趣味をも知り、言葉のなまりをも正し
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蝸牛氏かぎゅうし書屋しょおく主人と相識あいしらず
七百五十句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
大正十四年乙丑いっちゅうノ歳晩予たまたま有隣舎ゆうりんしゃその学徒』ト題シタル新刊ノ書ヲソノ著者ヨリ恵贈セラレタリ。著者ハ尾張国おわりのくに丹羽にわ郡丹陽村ノ人石黒万逸郎氏トナス。余イマダ石黒氏ト相識あいしラズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
カツテ東京ニ相識あいしル。すなわちイテコレヲ見ル。髩髪蕭疎びんぱつしょうそ顔色憔悴しょうすいセリ。シカモコレト当世ノ務ヲ談ズルヤ議論横ザマニ生ジ口角ばつはっシソノ気力ごうモ前日ニ減ゼズ。五更ノ頭ニ到リ辞シテ去ル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)