相應ふさは)” の例文
新字:相応
彼が私に置くのに相應ふさはしいと考へた信頼は、私の思慮に對する讚辭なのかも知れない。私はそれをそのまゝに顧みて受けるばかりだ。
ヂュリ いゝえ、母樣かゝさま明日あすしき相應ふさはしい入用いりよう品程しなほど撰出えりだしておきました。それゆゑ、わたしにはお介意かまひなう、乳母うばはおそば夜中よぢゅう使つかくだされませ。
蒼白く引緊つた顏——情熱よりは理智と意志を思はせる顏ですが、いかにも上品で清潔で、富める庄司三郎兵衞には、年齡のへだたりを越えて相應ふさはしい内儀です。
それこそムシケラにも價しない自分如きに相應ふさはしからぬが、私はたうとう恐懼の涙を堰止め得なかつた。
滑川畔にて (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
さうしてそんなモデルに相應ふさはしい女を見出す前に、或古い寺院の壁畫にゑがかれた、十字架に倒れたキリストを取り下して、窃かに土に葬り入れつゝあるマグダーレンが
赤い鳥 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
また、大通おほどほりの絹張きぬばり繪行燈ゑあんどう横町々々よこちやう/\あか軒提灯のきぢやうちんも、祭禮まつりやみはう相應ふさはしい。つき紅提灯べにぢやうちん納涼すゞみる。それから、そらえた萬燈まんどうは、しものお會式ゑしきおもはせる。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
電光艇でんくわうてい! 電光艇でんくわうてい! 如何いか其實そのじつ相應ふさはしきよと、わたくし感嘆かんたんすると、大佐たいさことばをつゞけ
小屋の下は崖になつて、そこらには沙魚はぜ釣りの足場として相應ふさはしい岩が四つ五つ並んでゐるので、私は一度釣船に乘せて貰つて島へ渡つた時、その岩から岩を飛び歩いたことがあつた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
謙讓けんぢやうはキリスト教徒の美徳です。それは特にローウッドの生徒に相應ふさはしいものです。私はそれの涵養かんやうに特別の注意を拂ふやうに指導してゐます。
檢屍前はこのいまはしい道具も取隱すわけに行かなかつたのでせう。刄渡り六寸程の直刀すぐはで、なか/\の業物わざものらしく、拵へも見事、武家娘の嫁入り道具に相應ふさはしい品です。
私は、彼が彼女を愛してゐないことを、また彼からその寶物たからものを得るには、彼女の資格は相應ふさはしくないことを感じた。