画家えかき)” の例文
旧字:畫家
「わしは、商売というものが無いから、こうして困っているのじゃが……わしは、その画家えかきなんでな。泊めてもらえないかな?」
再度生老人 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
床の間には、父忠寛と同時代の人で、しかも同村に生れた画家えかきのこした筆が古風な軸に成って掛っている。鳥を飼う支那風の人物の画である。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その一本はほとんど枯れ掛かって、上の方には丸裸の骨ばかり残った所に、夕方になるとからすが沢山集まって鳴いていた。隣には若い画家えかきが住んでいた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
画家えかきというものは、面白い扮装なりをしているもんですね。」と、お銀は山内のよろよろと帰って行った後で言い出した。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
『師匠は、この頃、いつでも懐中ふところに、画家えかきの川辺さんから貰って来た緑青ろくしょうのつつみを隠して持っているようだぜ……』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
画家えかきさんなんですって……何んだか、あんまり何時いつまでも見ていらっしゃるんで、私、いやになっちゃった……」
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
この降るのにたずねて来て、中二階の三段目から『時田!』と首を出したのは江藤えとうという画家えかきである、時田よりは四つ五つ年下の、これもどこか変物へんぶつらしい顔つき
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
幸いにしてガラスであり、その中に綿が入れてあったから、私は画家えかき位で収まっているのである。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
昔の画家えかきが聖母を乗せる雲をあんな風にえがいたものだ。山のすそには雲の青い影がいんせられている。山の影は広い谷間にちて、広野ひろの草木くさきの緑に灰色を帯びさせている。
西洋せいようひともう天使てんし——あれにはいろいろ等差とうさがあり、たまには高級こうきゅう自然霊しぜんれいしている場合ばあいもありますが、しかしちょいちょい病床びょうしょうあらわれたとか、画家えかきうつったとかいうのは
「僕ね、大きくなったら画家えかきになるよ。」
反抗 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
高瀬はこの人が来ると、百姓画家えかきのミレエのことをよく持出した。そして泉から仏蘭西フランスの田舎の話を聞くのを楽みにした。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「娘にはかえってこの方が好い」と宗蔵も言った。「なにも、女の画家えかきに成らなくたってもいんだから」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)