田園でんえん)” の例文
焼いた玉蜀黍とうもろこしを片手で押えてわんぐりみつきあの鋭い牙で粒をいかいてはぼり/\噛ったり、まさに田園でんえんの猫である。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
広々ひろびろとした、田園でんえんのぞみ、豊穣ほうじょう穀物こくもつあいだはたら男女だんじょれを想像そうぞうし、嬉々ききとして、牛車ぎゅうしゃや、うまあと子供こどもらの姿すがたえがいたのであります。
風はささやく (新字新仮名) / 小川未明(著)
四 これは田園でんえん新鮮しんせん産物さんぶつである。われらは田園の風と光の中からつややかな果実かじつや、青い蔬菜そさいといっしょにこれらの心象スケッチを世間せけんに提供するものである。
それはおも海岸かいがん砂丘さきゆうおこつたものであつて根府川ねぶがは山津浪やまつなみとは比較ひかくにならなかつたけれども、雪崩なだくだつた距離きより五六町ごろくちようおよび、山林さんりん田園でんえん道路どうろなりな損害そんがんあたへた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
田園でんえん一悲母いちひぼ
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
余は奥書院おくしょいんの戸をあけた。西南を一目に見晴みはらす此処ここの座敷は、今雪の田園でんえん額縁がくぶちなしのにして見せて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
にんまえには、さびれていく田園でんえん景色けしきがしみじみとながめられたのです。年上としうえ子供こどもは、くろひとみをこらして、遠方えんぽうをじっと物思ものおもわしげにつめていました。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)