生捉いけど)” の例文
部落の戦いは翌朝よくちょうまで続いた。が、はついに衆の敵ではなかった。素戔嗚すさのおは味方の若者たちと共に、とうとう敵の手に生捉いけどられた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
たたりを恐れぬ荒気の大名。おもしろい、水を出さば、天守の五重をひたして見よ、とそれ、生捉いけどって来てな、ここへ打上げたその獅子頭だ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町に別嬪べっぴんが多くて、山遊びがすきな土地柄だろう。果して寝転んでいて、振袖を生捉いけどった。……場所をかえて、もう二三人つかまえよう。
その内に朝焼の火照ほてりが消えると、ぽつぽつ雨が落ちはじめた。彼は一枚のころものほかに、何もまとってはいなかった。頸珠くびだまつるぎは云うまでもなく、生捉いけどりになった時に奪われていた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ところで、生捉いけどって籠に入れると、一時ひとときたないうちに、すぐに薩摩芋さつまいもつッついたり、柿を吸ったりする、目白鳥めじろのように早く人馴れをするのではない。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手足てあしをぴち/\とねる、二歳ふたつぐらゐのをとこを、筋鐵すぢがねはひつたひだりうでに、わきはさんで、やんはりといたところは、挺身ていしんさかさまふちさぐつてどぢやう生捉いけどつたていえる。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうかといって、宿場で厄介になろうという年紀としじゃあなし、無茶にくるわへ入るかい、かえって敵に生捉いけどられるも同然だ。夜が更けてみな、油に燈心だからたまるめえじゃねえか、恐しい。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
魔ものだの、変化だのに、挨拶は変だ、と思ったが、あとで気がつくと、女れんは、うわさのある怪しいことに、恐しくおびえていて、陰でも、退治たいじるの、生捉いけどるのとは言いはばかったものらしい。
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
若い衆が串戯じようだん生捉いけどつた。
玉川の草 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)