めづらし)” の例文
たくはへたる菓子くわしをかの三人の娘にもとらせければ、三人こしかけて箕居ふみはだかりあしはひのなかへふみ入れめづらしがりてくわしをくらふ。
「これはおめづらしい。何方どなたかと思ひましたら、蒲田君に風早君。久くお目に掛りませんでしたが、いつもお変無く」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ナニ横着わうちやくな事があるものか、イエあれはほんの心ばかりのいはひなんで、如何いかにもめづらしい物を旧主人きゆうしゆじんからもらひましたんでね、じつ御存知ごぞんぢとほり、ぼく蘭科らんくわはう不得手ふえてぢやけれど、時勢じせいに追はれてむを
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
人熊の穴におちいりて熊に助られしといふはなし諸書しよしよ散見さんけんすれども、其実地じつちをふみたる人のかたりしはめづらしければこゝにしるす。
「さやうで御座いますか。唯今ぢきに片付けますです。これはたつた一つ早咲はやざきで、めづらしう御座いましたもんですから、先程折つてまゐつて、いたづらに挿して置いたんで御座います」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すむ魚沼郡うおぬまこほりうち浦佐うらさ宿のざい大倉村の樵夫きこり八海山に入りし時、いかにしてか白き児熊こくまいけどり、世にめづらしとてかひおきしに香具師かうぐし(江戸にいふ見世もの師の古風なるもの)これを買もとめ
先に怪みし家内は彼の来りしよりもその用事の更に思懸おもひがけざるに驚けり。貫一は不在なりしかばこのめづらし客来きやくらいのありしを知らず、宮もまたあへて告げずして、二日と過ぎ、三日と過ぎぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)