煮立にた)” の例文
かまどにはちひさななべかゝつてる。しるふたたゞよはすやうにしてぐら/\と煮立にたつてる。そともいつかとつぷりくらくなつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たけやとわれてきてから一ねんあまりになりますが、もっとその以前いぜんから、あったものです。あるときは、炭火すみびのカンカンこるうえにかけられて、煮立にたっていました。
人間と湯沸かし (新字新仮名) / 小川未明(著)
この床の穴は、むかし攻め入ってきた敵兵てきへいの頭に、煮立にたったチャンをかけるのに使ったものでした。
それより湯を煮立にたてて焼錐やききりの穴よりそそぎ込みて、ついにそのヤマハハを殺し二人ともに親々の家に帰りたり。昔々の話の終りはいずれもコレデドンドハレという語をもって結ぶなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それから鍋をスポリと箝めるが一旦火になった炭だから決して消えない。中の火気は上の小孔こあなより上昇する外少しも散らないで鍋を四方より温める。灰をかけた火でも鍋の中はグラグラとよく煮立にたつ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
村落むら生徒等せいとら登校とうかうはやいことを教師けうしからたゞごんでもめられてたいので、あわてなくてもいのにしる煮立にたたぬうちから強請せがむのである。與吉よきちれで毎朝まいあさおつぎから五月蝿うるさがられてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
播磨はりまの一部では挽割麦ひきわりむぎ蚕豆そらまめとをまぜて、塩加減しおかげんをして飯にいたもの、備中びっちゅう吉備きび郡では麦と豆とをってまぜて煮た米のめし出雲いずもの松江附近では番茶ばんちゃ煮立にたててそのなかに飯を入れて煮たもの
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)