火口ほくち)” の例文
たきぎを一本手に取ると、陶器師は火口ほくちへ押し込んだ。パッと火の子が四散した。その一つが飛んで来て、陶器師の左の頬を焼いた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かくの如く苦患なやみを増さんとて永遠とこしへの熱おちくだり、砂の燃ゆることあたかも火打鎌の下なる火口ほくちにひとしく 三七—三九
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
第一、駒吉の頭は水気どころか、ろくに油気もない始末で、火を付けたら、火口ほくちのように燃出しそうに見えるのです。
おもくちたあぶらかしてたが、さてどうやらそれがうまくはこぶと、これもあしさきさぐした火口ほくちって、やっとのおもいで行燈あんどんをいれた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やがて彼は煙管を口にくわえて、さもうまそうに刻みの葉をふかしていた。燧石ひうちいしを打つ手つきから、燃えついた火口ほくちを煙草に移すまで、その辺は彼も慣れたものだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
糸編みの品で、煙管入きせるいれ燧石袋ひうちいしぶくろや、これに煙草入たばこいれ火口ほくち粉炭入こなずみいれなど一式揃っているものでありますが、面白いことにこれには必ず強くった糸のふさを長く垂らします。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
そのふっさりとしたる間へ火口ほくちに似た木の葉で拵えたものを入れてそれから日本の昔の流儀で燧火石ひうちいしを打って火を移すのです。そうして皮のふいごでぼつぼつと風を送るんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
ふびんや少女おとめの、あばら屋といえば天井もかるべく、屋根裏はしばく煙りに塗られてあやしげに黒く光り、火口ほくちの如き煤は高山こうざんにかゝれる猿尾枷さるおがせのようにさがりたる下に
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その火花を石に添えたわずかな火口ほくちに点じようとするのだから六かしいのである。
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
口をとんがらして火口ほくちを吹いてゐたが、やがてカガニェーツ——それは陶器のかけらに羊の脂をたたへたもので、小露西亜では普通一般の燈火である——を手にして、道を照らしながら歩き出した。
ハバマヤボクチ、葉裏の毛を火口ほくちにつかったものです
燧石ひうちいしと火打鎌と、火口ほくち硫黄いわう附木ぢや、あんなことはむづかしからう。——そんなたよりない火附け道具で、四年越しの惡戯はできない——焔硝えんせうかな——」
あぶられたッて。そんなら、行燈あんどんのわきに、油差あぶらさし火口ほくちがおいてあるから、はやくつけてくんねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
カッとひらいた火口ほくちの奥で、真紅の焔がえんえんと燃え、その上に懸けられた筒型の釜を、メラメラめている有様は、決して快いながめではなく、その釜の中の熱湯が
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あの火口ほくち硫黄いわうをつけた稽古矢を、飯倉か巴町ともゑちやうの弓師に見せて來るがいゝ、——誰があつらへた矢か解るだらう。
竈の火口ほくちへ手をかざしながら、草賊そうぞくおさ毛利薪兵衛は、物臭ものぐさそうにこう云った。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
燧石ひうちいしと火打鎌と、火口ほくち硫黄いおう付け木じゃ、あんなことはむずかしかろう。——そんなたよりない火付け道具で、四年越しの悪戯いたずらはできない——焔硝えんしょうかな——」
火口ほくちと硫黄はポツポと燃えてゐる、——あの晩藤助は主人の福島嘉平太をおびき出し、生垣にピツタリ身體をつけるやうにして、屋根の上の怪し火を見せた、後ろから槍の穗先が出て