清国しんこく)” の例文
旧字:清國
韓山かんざんの風雲はいよいよ急に、七げつの中旬廟堂びょうどうの議はいよいよ清国しんこくと開戦に一決して、同月十八日には樺山かばやま中将新たに海軍軍令部長に補せられ
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
そこに手をつないでいた清国しんこくの女の子が、棒の倒れるように転がった。纏足てんそくをした耳環の母親が、子供を抱き起しながらトム公を早口でののしった。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「私は清国しんこくうらやましいと思いますね、あっちでは花といえば菊のことで、そのほかの花はぜんぶひっくるめて洋花というそうじゃありませんか」
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ところがその年の暮には呆気あっけなく遼東半島を清国しんこくに還付している。しかも今度はその、同じ旅順に半年の歳月と何十万の人命をかけているのです。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
ことし仙台医専に清国しんこく留学生が一名、私たちと同時に入学したという話は聞いていたが、それでは、この人がそうなのだ。唱歌の下手くそなのも無理がない。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
志士の口をかんして、強いて無事を装わんとするに際し、他方においては、海外の形勢いよいよ切迫となり、一衣帯水いちいたいすいを隔てたる清国しんこくは、今や英国と事を生じ
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かれ清国しんこくの富豪柳氏りゅうしの家なる、奥まりたる一室に夥多あまた人数にんずに取囲まれつつ、椅子いすに懸りてつくえに向へり。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
最後にこんな戦争を始めた、日本国と清国しんこくとが憎い。いや憎いものはまだほかにもある。私を兵卒にした事情に幾分でも関係のある人間が、皆私には敵と変りがない。
首が落ちた話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
維新の後太政官修史局また東京府に出仕したが長く官途に留らず明治十七年清国しんこくに遊び、帰朝の後悠々ゆうゆうとして文筆に親しみ大正三年二月十八日享年八十三歳を以て没した。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
支那しながまだ清国しんこくといつたころ北京ペキンの宮城の万寿山まんじゆさんの御殿にかけてあつたもので、その頃、皇帝よりも勢ひをもつた西太后せいたいごう(皇太后)の御機嫌ごきげんとりに、外国から贈つたものを
ラマ塔の秘密 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
清国しんこくの津々浦々からのぼって来る和船帆前船の品川前から大川口へ碇泊ていはくして船頭船子ふなこをお客にしている船乗りの旅宿で、座敷の真中に赤毛布あかげっとを敷いて、けやき岩畳がんじょうな角火鉢を間に
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
なるほどいくら風通しがよく出来ていても、人間にはくぐれそうにない。この竹をもって組み合せたる四寸角の穴をぬける事は、清国しんこくの奇術師張世尊ちょうせいそんその人といえどもむずかしい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その結果としてペキンへ行って清国しんこく政府に願うてチベット政府の方へ命令を下すように手続きを取るのが利益か、ネパールの方へ行って頼むのが利益かということについて余程考えたです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
腰から下のバツとひらいた清国しんこく学生が五六人何やら大声にのゝしつて居た。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
清国しんこくとの戦争が布告されたとき、香苗は高原から下りて、街道の町はずれにささやかながら一棟の救護院を建てた。
春いくたび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かれ清国しんこくの富豪りゅう氏の家なる、奥まりたる一室に夥多あまた人数にんずに取囲まれつつ、椅子にかかりてつくえに向えり。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天保十三年壬寅じんいん 佐久間象山海防八策をたてまつる。清国しんこく道光どうこう二十二年、英兵上海を取り、南京に入る。南京条約る。七月、文政打払令うちはらいれいを修正して、寛政の旧に復す。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
あいつは清国しんこく政府から選ばれて、日本に派遣はけんされて来た秀才だ。日本は、あいつに立派な学問を教え込んでやって帰国させなければ、清国政府に対して面目が無い。
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
うう朝鮮か……東学党とうがくとうますます猖獗しょうけつ……なに清国しんこくが出兵したと……。さあ大分だいぶおもしろくなッて来たぞ。これで我邦こっちも出兵する——戦争いくさになる——さあもうかるぜ。お隅、前祝いだ、おまえも一つ飲め
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
自分の職務上病傷兵を救護するには、敵だの、味方だの、日本だの、清国しんこくだのといふ、左様さような名称も区別もないです。ただ病傷兵のあるばかりで、その他には何にもないです。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)