そえ)” の例文
氏の慇懃丁寧なる、もし書斎のデスクの上へ、迂濶うっかり腸を忘れて行こうものなら、後から小包郵便にして、そえ手紙と共に送り返される。
小酒井不木氏スケッチ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もう一つ言いそえておきたいのは、当時の先生の病体についてである、明治三十三年の夏から歌の会、俳句の会も出来なくなった
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
また日高郡原谷はらたにという所でも、合祀の遺恨より、刀で人を刃せしことあり。東牟婁郡佐田さだおよびそえかわでは、一昨春合祀反対の暴動すら起これり。
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
ここにせめては其面影おもかげうつつとどめんと思いたち、亀屋の亭主ていしゅに心そえられたるとは知らでみずから善事よきこと考えいだせしように吉兵衛に相談すれば、さて無理ならぬ望み
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
茶呑咄ちゃのみばなしに残したる。炭売多助たすけが一代記を。拙作せっさくながら枝炭えだずみの。枝葉をそえ脱稿やきあげしも、原来もとより落語なるをもって。小説稗史はいし比較くらべなば。所謂いわゆる雪と炭俵。弁舌くちは飾れど実の薄かるも。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
取落さぬばかりにて「はい此犬は、此犬は、そうです何所に居ましたか、存じませんいや思い出しませんが」と綴る言葉も覚束おぼつかなし余「それとも太郎殿について行きでもしましたか」此そえ言葉に力を
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
かびはえ駄洒落だじゃれ熨斗のしそえて度々進呈すれど少しも取りれず、随分面白く異見を饒舌しゃべっても、かえって珠運が溜息ためいきあいの手のごとくなり、是では行かぬと本調子整々堂々
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)