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気疎
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けうと
ふりがな文庫
“
気疎
(
けうと
)” の例文
旧字:
氣疎
此
夜
(
よ
)
さや、夜鳥も啼かず、藪かげの
隣
(
となり
)
の寺もしんしんと雨戸
鎖
(
さ
)
したれ。時として川瀬の
音
(
おと
)
の浪の
音
(
ね
)
と響き添ふのみ。それもただ遠し、
気疎
(
けうと
)
し。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
「どうだか解りゃしない。行って見ないかと言う人があるの。」お庄は外の方を見ていながら、
気疎
(
けうと
)
いような返辞をした。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
またこの「毛唐」がギリシアの「海の化けもの」kètos に通じ、「けだもの」、「
気疎
(
けうと
)
い」にも縁がなくはない。
言葉の不思議
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
若者は組み伏せられたまま左の腕を口にあてがって思いきりかみしばりながら泣き沈んだ。その牛のうめき声のような泣き声が
気疎
(
けうと
)
く船の上まで聞こえて来た。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
勝は外を通ってる人の声を聞いても時々
気疎
(
けうと
)
いことがありますぞな。ようあんな
下卑
(
げび
)
たことを大きな声で
喋舌
(
しゃべ
)
ってげらげら笑っておられると愛想が
尽
(
つ
)
きてしまう。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
▼ もっと見る
直射光線が
気疎
(
けうと
)
い回折光線にうつろいはじめる。彼らの影も私の脛の影も不思議な鮮やかさを帯びて来る。そして私は
褞袍
(
どてら
)
をまとって
硝子
(
ガラス
)
窓を
閉
(
とざ
)
しかかるのであった。
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
どうせ、中学にゆけるんじゃなし、四年を卒業したらはやく
何処
(
どこ
)
かの工場に出て、おあしをとらなければならぬと思っている私には、そんなことはまったく、
気疎
(
けうと
)
い話であった。
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
或いは婦人に普通なる心弱さ、ないしは好奇心からではないかと、思うくらいに
馴々
(
なれなれ
)
しかったこともあるが、それにしては彼らの姿形の、大きくまた
気疎
(
けうと
)
かったのが笑止である。
山の人生
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
時おり雲間を洩れる、信濃の高原——安曇の青野は、この日頃、かどかどしさと暗さに馴れた眼には、まったく別種の、
気疎
(
けうと
)
いほどのどやかな世界に見える。ふとどこかで雷鳴がする。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
世にも悲しげなる
形
(
さま
)
して、花をたむけ水を
灌
(
そそ
)
ぎたるを見て、あな哀れ、わかき
御許
(
おもと
)
のかく
一〇二
気疎
(
けうと
)
きあら野にさまよひ給ふよといふに、女かへり見て、我が身
夕
(
よひ
)
々ごとに詣で
侍
(
はべ
)
るには
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
気疎
(
けうと
)
そうな顔つきで、妻はぼんやりと焦点のさだまらぬ眼つきをしている。あの弱々しい眼のなかから、パッと一つの明るいものが浮びあがったら……彼は電車の
片隅
(
かたすみ
)
でぼんやりと思い
耽
(
ふけ
)
っていた。
美しき死の岸に
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
水の音がただ絶えず
気疎
(
けうと
)
く耳についた。雪の中をオヴァシューズでS君の家の裏口の方から庭にまわった時にゴム底が凍った凸凹になっている雪の上を歩くたびに、ギュッ、ギユッと音をしてすべる。
土淵村にての日記
(新字新仮名)
/
水野葉舟
(著)
気疎
(
けうと
)
いアロイヂオになつてしまつて……。
詩集夏花
(新字旧仮名)
/
伊東静雄
(著)
今のことはた
気疎
(
けうと
)
くて
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
燻
(
くす
)
みきった男女の顔が、そこここの薄暗い店屋に見られた。活気のない顔をして職工がぞろぞろ通ったり、自転車のベルが、海辺の湿っぽい空気を透して、
気疎
(
けうと
)
く耳に響いたりした。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
気疎
(
けうと
)
い睡気のようなものが私の頭を誘うまで静かな海の
暗
(
やみ
)
を見入っていた。——
冬の蠅
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
ぴしゃぴしゃと
気疎
(
けうと
)
い
草鞋
(
わらじ
)
の音を立てて、往来を通る者がたまさかにあるばかりで、この季節の
賑
(
にぎわ
)
い
立
(
だ
)
った様子は
何処
(
どこ
)
にも見られなかった。帳場の若いものは筆を持った手を
頬杖
(
ほおづえ
)
にして居眠っていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
慵
(
だる
)
い体を木蔭のベンチに腰かけて、袂から
甘納豆
(
あまなっとう
)
を
撮
(
つま
)
んではそっと食べていると、池の向うの柳の蔭に人影が夢のように動いて、
気疎
(
けうと
)
い楽隊や
囃
(
はやし
)
の音、騒々しい
銅鑼
(
どら
)
のようなものの響きが
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
気
常用漢字
小1
部首:⽓
6画
疎
常用漢字
中学
部首:⽦
12画
“気”で始まる語句
気
気色
気遣
気勢
気持
気質
気障
気配
気味
気高