おつか)” の例文
今年の四月頃から懐妊の気味で、其の前から出るのはいるのと言つて居たが、愈々いよいよ上京の話が決ると、『わたしばかり置いて行くのかえ、おつかさん』
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「うるさかつたのかい。わたしおつかさんの、田舎ゐなかのおてらへお墓参はかまゐりにつたんでね。昨夜ゆうべはやてしまつたんだよ。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
だつて、きみうちはおやしきだから、ひろ座敷ざしきふたつもみツつもとほらないと、おつかさんやなに部屋へやけないんだもの。あひだきみとこで、徹夜てつやをしたときは、ぼくは、そりや、さびしかつた……
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おそかつたでせう。気に入らないんだもの、おつかさんのつた髪なんぞ。」とけ出しために殊更ことさらほつれたびんを直しながら、「をかしいでせう。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
『お前なぞは男だから、成長おほきくなつたら、いくらでもお墓まゐりが出来るけれど、わたしなどは女だから、ねえおつかさん。……でも、一生に一度はおまゐりしたい!』
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
去年きよねんおつかさんがなくなつたからね……」
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)