“歴(れっき)” の例文
何ぼうはあ貧乏してても、もとあ歴(れっき)として禰宜様の家柄でからに、人に後指一本差さっちゃことのねえとっさん捕(つか)めえてよくもよくも……
禰宜様宮田 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
また泥棒に入られる前夜、外泊したのは事実だが、それは国際文化社という歴(れっき)とした雑誌社の編集者で、男がふたりで、女は桂子ひとり。
野狐 (新字新仮名) / 田中英光(著)
縞の着物に手甲脚袢(きゃはん)、道中合羽に一本ざし、お約束の笠を手近の縁台(えんだい)へ投げ出したところ、いかにも何国の誰という歴(れっき)として名のあるお貸元が
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
温厚玉のような君子が歴(れっき)とした官職の肩書(かたがき)附(つ)きの名刺を示しても聞かれないで警察へ拘留されたという話も聞いている。
最後の大杉 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
その遊女は本名お縫さんと謂っての、御大身じゃあなかったそうじゃが、歴(れっき)とした旗本のお嬢さんで、お邸(やしき)は番町辺。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なんのなんの……俳優(やくしゃ)どころか! 歴(れっき)としたお方ですから、今ではクラーグ造船の、重役におなりですわい」
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
留守を守る女房のお政(まさ)は、お摩(さす)りからずるずるの後配(のちぞい)、歴(れっき)とした士族の娘と自分ではいうが……チト考え物。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「お才は歴(れっき)とした旗本の囲い者だ。御家人崩れの遊び人と因縁があったと知れちゃ、一ぺんにお払箱になる」
当時『船』と云や、もぐりの遊び場の中で、歴(れっき)としたものだったよ。いまと違って、組が二つほどあってね。
地虫 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
もっと歴(れっき)とした本物の切支丹大名が家康の禁教令の断乎たるのに慌てふためき、にわかにそれぞれ迫害者になったのだから、田舎策師の政宗などは無邪気な方であった。
歴(れっき)とした理由があって出て来るのであるが、妖怪の方は、山野に出没する猛獣と等しく何らのうらみなしに、良民をなやまし、あるいはとって喰う等の残酷な事を行う。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
日田のお金奉行の手先とは言え歴(れっき)とした公方様の御家来の野西春行を、どのような風に処置さっしゃるか、お納戸頭が、蔵元屋の帳面の大穴をどう誤魔化さっしゃるかが
ためしに廻ってる、なんざあ泣かせるせりふだぜ、だがなあ親方、刺身がかなっ臭えなんていうところは瓦版屋じゃあねえな、おまえさんはどこか歴(れっき)とした料理屋の板前だろう
へちまの木 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
芸者なものか、よその歴(れっき)としたお上さんだと言っても、どうしても承知しやがらねえで、俺が隠してるから俥屋に聞いて見るって、そう言ってるところへヒョッコリお光さんが帰って来たのさ。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
歴(れっき)とした夫君もあって麹町内幸町に瀟洒(しょうしゃ)の構え、御本人は細面の上品な風采、謹厳一方であるが晴湖と反対の優しく女らしい先生、但し揮毫の依頼はいかなる向きでも一人一品と厳然たる規定
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
両(ふた)つながらそれぞれ歴(れっき)とした訳があり、決して無茶苦茶な乱風でない。
何やっぱり道はおんなじで聞いたにも見たのにも変(かわり)はない、旧道はこちらに相違はないから心遣(こころや)りにも何にもならず、もとより歴(れっき)とした図面というて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
相手の人為(ひととな)りに完全に魅(み)されてしまって、ただ由あるお旗下の成れの果てか、名前を聞けば三尺飛び下らなければならない歴(れっき)とした御家中の、仔細あっての浪人と
事件の全貌(ぜんぼう)は、皆川半之丞の素姓が判りさえすれば、わけもなく見透せるような気がしますが、いくら浪人でも、歴(れっき)とした二本差を、証拠も何にもなしに縛るわけにゆかず
あの年配のお嬢さんには、どんな突飛なことも、御自分だけの歴(れっき)とした理由がありうるわ。
街はふるさと (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
「いや、いまはわかっている、一昨日へんな間違いがあって、そのとき実家のことも住居のこともわかった、歴(れっき)とした大商人の娘で、本郷のほうに小間使と二人別居しているんだ」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
本来ならば……オ……俺が王弟だ! 歴(れっき)としたオスカル三世の子でありながら……父の不心得のばっかりに、貴様らの手にかかって死ぬとは……忘れんぞう、この怨みだけは永劫(えいごう)忘れんぞう……
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「植木屋の下職(したしょく)などを、いくら想ったところで、どうなるものでもない。じぶんには、父のきめた歴(れっき)とした良人(おっと)が、いまにも伊賀から乗りこんでこようとしている……」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
米五千俵、呉服太物四千反、糸綿千二百貫、海産物千二百貫、酒五百樽、醤油味噌八百樽、その他なになにという巨額な物資で、菱垣船(ひしがきぶね)の和田屋忠兵衛の振り出しにかかる歴(れっき)とした証券だ。
そうだとすれば、歴(れっき)としたモデルがあるだろうというのである。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
旦那は歴(れっき)とした旗本でいらっしゃる、男でお侍で旗本で、拝見したところ躯もお達者なようだ、きざな云いようだが、いわば四民の上に立つ御身分でいて、寝ころんだまま弱いあきんどの物を
あだこ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)