きめ)” の例文
それから満枝は益す禿のちようを得て、内政を自由にするやうになつたから、定めて生家さとの方へみつぐと思の外、きめものの外は塵葉ちりつぱ一本らん。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
(へん、腹合せの姉弟だ。)と一万石にきめっちまう! 旦那が悪いというでもなく、私と芳さんが悪いのでもなく、ただ悪いのは世間だよ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度お若さんがこのいおりこもる様になった頃より、毎日々々チャンと時間をきめて廻って来る門付かどづけの物貰いがございまして、衣服なりも余り見苦しくはなく
して足早に行過しも可笑をか御嶽みたけ宿しゆくにて晝食ちうじきす此に可兒寺かにでらまた鬼の首塚などありと聞けど足痛ければ素通りときめて車を走らす是より山の頂の大岩道を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
にくみて種々折檻せつかんなしあまつさへ藤三郎の乳母お安と言女をも永のいとまを遣したり其わけは此乳母先代平助の時より奉公ほうこうに來り譜代ふだい同樣のきめにて藤三郎の乳母となせしかば藤三郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そう言ってきめつけそうな目をして、小野田は疳癪かんしゃくが募って来るとき、いつもするように口髭くちひげの毛根を引張っていたが、調子づいて父親を欵待もてなしていた彼女に寝込まれたことが
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
もうどこかの人におきめになっているのではありませんか。
はアまことに何うもお芽出度めでとうございます、なにわっちは側に立っていて見兼たもんですから、ぽかり一つきめると、驚いて逃げる所を又打殴ぶんなぐったんだか
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ますます思いせまる事ありて覚悟をきめしならんと身を潜まして窺うに、幾度か欄干へ手をかけて幾度か躊躇し、やがて下駄を脱ぎすつる様子に走り倚りて抱き留めたり。
良夜 (新字新仮名) / 饗庭篁村(著)
違えずまはるが肝要かんえうなり今も云通り爰の處の川柳點にて「日々の時計とけいになるや小商人こあきんど」とぎんじられしと云ば長八は感心して成程よく會得わかりしとて長兵衞のはなしの通り翌日あすの朝も刻限こくげんきめて籠を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ここできめて下さいましょうか。過日このあいだ、病院で掛合いました時のように、久能山で返事しようじゃ困りますよ。ここは久能山なんですから。またと云っちゃ竜爪山りゅうそうざんへでも行かなきゃならない。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お前さん方のために、どうおきめ下さるか、それをおきき
所を得ますようにおきめ下さいまし。